結構、めずらしい試合になったと思う。阪神ベンチは外野の「守備の要」であるセンターを3人に守らせた。近本光司から始まって陽川尚将、そして決勝1号2ランのヒーロー福留孝介だ。センターがころころ代わる試合は、あまり見た覚えがない。

「めずらしい」と書いたが、やはり、こういう試合はあまり実現しない方がいい気がする。何しろ「守備の要」。故障でもないのにレギュラーの代わりに初体験の選手が守ったり、ベテランが入ったり。決していい流れではないだろう。

5回、近本に代打陽川が出たときは思わず「そうか」とうなってしまった。確かに近本はそれまでの2打席でヤクルト先発の左腕高橋奎二にタイミングが合わず、凡退していた。それでも1死走者なしの場面で代打か。3打席目で。正直、そう思った。

「2年目のジンクス」なのか。ルーキーだった昨年、セ・リーグの新人最多安打記録となる159安打を放ち、盗塁王も獲得した。何でも大げさに書く我々、虎番記者の予想をはるかに超える働きだった。

昨年、クライマックスシリーズも終わり、安芸の秋季キャンプの頃だった。練習を終えた近本光司と新人王について少しだけ話した。記者の投票で決まる新人王のタイトル、昨季の候補者は本命がヤクルト村上宗隆で対抗が近本だった。

「そりゃあ、もらえるものならほしいよね?」。そんな話をしてみた。そのとき近本はこう言った。

「いやあ。新人王はボクじゃないでしょ。村上くんだと思ってますよ。そうなると思います」。笑顔で、しかし、キッパリと言った。冷静に状況を分析できるクレバーさが伝わってくる上に、イヤみのない話しっぷり。謙虚で誠実な人柄を感じた。

そんな近本だが今季、ここまで打撃面で波に乗りきれていない。それが開幕ダッシュ失敗につながっている要因という見方もある。しかし正直、それは荷が重すぎるのではないか、と思う。まだ2年目というよりも、打撃面で大きな責任を負わせるような存在ではないだろう。

もちろん1軍で出場する以上、まったく打てないでは話にならない。それでも四球でも何でも出塁し、走って、かき回す。それが本来の仕事だ。不振に負けず、まず出塁に集中してほしい。途中交代の近本にとっては逆転勝利が救いだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)