バンテリンドームでこれほど楽な展開になるとは。首位を走る阪神と4位に苦しむ中日との違いと言えばそれまでだが前日の痛い敗戦がまったく影響していない。いい勝ち越しだ。

何といっても先発ガンケルだろう。四球を出さないテンポのいい投球で7回まで中日打線を相手に6安打無失点。これで開幕から負けなし6連勝、あのトレイ・ムーア以来だという。

懐かしい。虎番キャップだった03年。闘将・星野仙一で歓喜の胴上げを果たしたときの助っ人左腕だ。星野時代の2年間、阪神に在籍して通算20勝17敗。特に03年は10勝6敗と優勝に貢献した。それ以上に往年の虎党なら知っていることだが最大の特徴は“強打者”だったことだ。

投手ながら2シーズンで31安打を放っている。03年など43打数14安打、実に3割2分6厘の打撃成績を残した。「あいつ、ホンマ、よう打つわ。打つのが好きなんやな」。闘将もあきれたように話したものだ。

そこでこの日のガンケルの打席だ。3回無死一塁からスリーバントを決めた。これが効き、先制に成功。中日もその裏、同じ状況で先発・岡野祐一郎が犠打を決められなかった。対照的な結果が勝敗に影響したと言えば言い過ぎだろうが優勢に立てたのは事実だ。

同時にこれはどうかな? と思ったのは6回だ。2死走者なしで打席に入ると中日の3番手・山本拓実から中前打を放った。この時点で球数は64球で5回無失点。阪神は4-0でリードしていた。これなら完封、完投はともかく8回までいけるのではと思っていた。

結局、ガンケルは7回無失点でお役御免。間違いなく大きな仕事だが1イニングでも長く投げるために6回はあっさりアウトになってもよかったのでは、と感じた。そうなれば7回は近本光司から。結果的に中野拓夢からの攻撃で1点追加したが「流れ」を考えて自分の仕事に徹するのも必要ではないか。

ガンケル本人というより投手コーチ・福原忍かヘッドコーチ・井上一樹あたりが、その辺りを徹底した方がよかったのではないか。ムーアならそれでも「打たせろ!」と言ったかもしれないけれど。

指揮官・矢野燿大はチャレンジ野球が信条なのでそんな発想はしないのかもしれない。それでも間違いなく優勝チャンスの今季だけに、そんな細かい部分も気になってしまう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)