ホッとした。広島の主砲、いや日本の4番・鈴木誠也の「7試合連続本塁打」というプロ野球記録がかかっていた試合。5回に申告敬遠はあったものの阪神ベンチ、バッテリーは鈴木としっかり勝負した。これにホッとしたのだ。

もしも歩かせてばかりなら試合に勝ったとしても、つまらないと思う。打てば記録をつくる男に真っ向から勝負する。そして抑え、勝つ。それこそプロの姿だろう。結果として西勇輝は2四球を出したけれど、3番手・及川雅貴は7回に走者を置いた場面で三ゴロに打ち取っていた。

鈴木誠との勝負を気にかけていたのには他の理由もある。怪物ルーキーとして前半戦、虎党を大喜びさせた佐藤輝明がこの日、初めて登録抹消された。そして藤浪晋太郎も同じく、また2軍に行った。

新人の佐藤輝については仕方がないと思う。明らかにバットがボールの下を通過するスイングで空振りが目立つ。技術を見直す時間は必要だろう。もう少し2軍行きが早くてもおかしくなかったかもしれない。

そして藤浪だ。こちらは逆にファームで調整してどうこうという感じではない気も、正直、する。それでも指揮官・矢野燿大にすれば好調と思ったら急変する前日の様子を見て「これでは使えない」という判断を下したのだろう。

藤浪と佐藤輝の2人が同日に2軍落ち。現状で戦力になっていないのだから仕方がないのだけれど感想を言わせてもらえればシンプルに「寂しい」だ。

広島の鈴木誠はスターだ。実力、実績、名声、それにオーラがある。打てないときは広島ファンから文句を言われるようだが、それもスターの宿命だ。翻って阪神に鈴木誠のような気配を持つ選手はいるだろうか。独断と偏見で言わせてもらえば、投なら藤浪、そして打で可能性が高いのは、やはり佐藤輝だと思う。

スターというのは理屈で説明できないところがある。もちろん実績、実力は必要だがそれだけでもない。背景やムード、そんなものすべてが合わさって他からそう見られるものだ。「なろう」と思ってなれるものでもない。

そのスター、あるいはスター候補2人が2軍行きとなった阪神。これは悲しいことだ。16年ぶり歓喜のゴールを果たすとき、2人にはやっぱり1軍ベンチにいてほしいと思う。しっかりと戦力として。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)