自民党の総裁選報道に接しながら阪神の監督が立候補制ならどうやろ、と妄想する。あの人は手を挙げるだろうな。あの人はどうか。あなたはさすがにしんどい…などと想像すると妙に面白かったりする。

もちろんプロ野球の監督は立候補でなるものではない。球団、親会社から選ばれるものだ。球団のエラいさんにゴマをすってもなれない。逆に頼み込まれる場合もある。

この日、甲子園でオーナー兼球団社長の藤原崇起が、指揮官・矢野燿大に来季続投を正式要請したと明かした。日刊スポーツなどは7月15日の段階で、すでにこの方針を報道している。詳細は虎番記者の記事で読んでいただくとして、現在、首位を走るここまでの戦いを評価しての続投要請だ。

そこでいつも以上に試合内容に注目していた。球団側が去就を口にしたり、報道が出たりした試合、どんな因果関係があるのか分からないが、妙な敗戦になることがあるからだ。結果は高橋遥人の好投から勝利の方程式につないで1-0勝利。チーム、ナインが「続投路線」を受け入れているようにも思えた。

矢野について話した藤原のコメントで注目した点がある。「いろんな手を打って頑張ってくれている」と評価したことだ。この試合もそうだ。両軍合わせて唯一の得点は走者・近本光司をスタートさせた後で糸原健斗の決勝打が出たもの。7回には昇格させたばかりの陽川尚将に送りバントをさせようとする場面も見受けられた。打順変更も含め、成功するかどうかは別にして懸命に策を練っている。

だけど実はそれは矢野の理想とする野球ではない。「ボクの理想はノーサインです。何のサインもなくても選手が自分で考えて戦う試合ですね」。過去に理想のスタイルを聞いたとき、そう答えていた。それから考えると、そのレベルにはまだ遠いということだろう。やるべきことは多い。

開幕前、矢野に確認したのは今季が「勝負の3年目」ということだ。オーナーが続投方針を明かしたのだから普通に考え、矢野もそのつもりだろう。だからと言って今季が勝負のシーズンであることは不変だ。結果次第で気持ちの変化もあり得る。残り30試合でリーグ優勝を果たす。そこから日本シリーズ出場権を獲得して「日本一」というゴールを目指す「勝負」のシーズンであることに何の変わりもない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)