先発投手が完投し、9得点は全部クリーンアップの打点という理想的な試合で交流戦を終えた阪神は「ラストチャンス」をモノにしたといえる。交流戦最初の楽天戦(5月24日)に勝った時に「交流戦はキッカケではない。ラストチャンスだ」と書いた。低迷・阪神にとってこの18試合は浮上のために絶対に貴重だし、ここでダメならどうしようもない。そう思っていたからだ。

そこで踏ん張った。18試合を12勝6敗で終え「貯金6」をマーク。交流戦前の「借金12」を「同6」にまで減らした。振り返れば「なんで代走出さん」問題の5月26日楽天戦、「なんで急に原口5番」問題の同29日ロッテ戦など惜しい敗戦もあった。あれがなければ…と欲も出るが結果として4位まで浮上したし、十分に評価できる戦績だ。

この試合前は少し“疑念”が湧いていた。1番・島田海吏から中野拓夢、近本光司の「俊足トリオ」を変えてきたからだ。左腕・宮城大弥への対策で1番から山本泰寛、北條史也の右を並べた。「左右病か」と思ったが、この2人が活躍。チャンスメークし、クリーンアップにつなげたのが勝因となった。

これは大きい。指揮官・矢野燿大の策が当たれば、チームに自信が生まれる。もちろん、この日は下位打線がさっぱりで中野は下降気味? の不安も生まれるのだが、いずれにしても矢野は動く監督だし、動いて勝てたのは意味がある。

何より「皮算用」できるようになったのは大きい。2桁借金ならどうしようもないが「借金6」なら先を見渡す気にもなるというもの。そしてリーグ戦再開のカードに注目してみたい。

まず17日から甲子園でDeNA3連戦。その後、敵地で広島3連戦だ。再び甲子園に戻って中日3連戦。さらに横浜に移動し、またDeNAと3連戦である。強いヤクルトと、直接対決の成績はともかく上位の巨人との対戦がないのだ。

得意のDeNA6試合がある12試合を「9勝3敗」で乗りきれば6月中に5割復帰できる。そうなればAクラスも-。そう書くとみんな「そんなにうまくいくかいな」と笑うはず。こちらもそう思う。それでもそんなことが言えるようになっただけマシなのだ。

「このまま行くとは思わない。でも、もっと良くなることも十分、自分たちでできる」。矢野も手応えを感じてきた様子だ。虎党はまだ楽しめるかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

オリックス対阪神 1回表阪神1死、北條は遊内野安打を放つ(撮影・加藤哉)
オリックス対阪神 1回表阪神1死、北條は遊内野安打を放つ(撮影・加藤哉)