誤解を恐れず言えば、いまの阪神は妙に面白い。虎党を驚かせたのは4回の守備だ。無死一、三塁から岡本和真は見逃し三振。だがそこでスタートした一走・丸佳浩を刺そうと捕手・梅野隆太郎が二塁に送球してからバタバタした。

動きで言えば「2-4-3-5-2-5-7-3」。結果的に挟殺プレーの間に佐藤輝明の捕球ミス、大山悠輔が悪送球と二重の失策が出て2失点。これで逆転を許してしまう。

思い出したのは5月27日ロッテ戦だ。この試合は佐藤輝明が走塁で驚かせた。4回1死三塁からロッテ佐々木朗希の前に佐藤輝は二ゴロ。これで本塁へスタートした三走・中野拓夢が三本間に挟まれた。

挟殺プレーで中野がアウトになる間に打者走者の佐藤輝は二塁へ。ここまでは普通。だが佐藤輝はなぜか二塁も大きく回ってしまう。結果、二、三塁間に挟まれて憤死。見たこともない併殺の光景だった。

これには選手に文句を言わない指揮官・矢野燿大も「あれはダメ。2死二塁でいいんだから。気持ちが行ったからということじゃない」と指摘したほど。それでもその試合は佐藤輝に決勝弾が出た。この日も大山が本塁打、佐藤輝も適時打とミスした2人が打点を挙げているのも面白い。

意見はあるだろうが現状の阪神に“まだ若いのか”と思ったりする。年齢もそうだが経験の意味でこれからという気もするのだ。「結構ええトシやで」という声も聞こえてきそうだが、ギリギリの経験の面でまだ足りないのかもしれない。若さの失敗は今後に生かしてほしいと思う。

反対に“若さの特権”も出た。スピード感だ。この試合、陰の殊勲者は島田海吏、熊谷敬宥だろう。1点を追う6回1死二塁から佐藤輝の左前打で二走・島田が生還した。左翼ポランコの守備能力も加味しての走塁だろうが、かなり速かった。さらに同点の7回1死二、三塁。北條史也が放ったライナー性の中飛で熊谷がかえってきたのだがこの動きが素早かった。

ゴロゴー、当たりゴーの勢いで離塁していたところで浅い飛球。帰塁してからの再スタートになったのだが、それを感じさせない余裕の走塁だった。スピードは大きな武器になるという証明である。普通ならミスで負けているような試合を拾え、やっぱり巨人は苦しそう。ここは一気に3連勝といきたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 7回表阪神1死二、三塁、北條の中犠飛で三塁から生還する熊谷。左はメルセデス(撮影・菅敏)
巨人対阪神 7回表阪神1死二、三塁、北條の中犠飛で三塁から生還する熊谷。左はメルセデス(撮影・菅敏)