あの長身は目立ってたなあ…。藤浪晋太郎不在の宜野座キャンプ。そんな気持ちが湧いてくる。ある意味で後がない状況での大リーグ挑戦。応援する気持ちしかないが寂しさもある。

その沖縄・宜野座から遠く離れた兵庫・鳴尾浜で6日、藤浪は渡米前最後の練習を終えたようだ。阪神時代の思い出を聞かれ、こんなふうに話したという。

藤浪 よく先輩ら、梅野さんとか、岩貞さんとか、岩崎さんとか、ちょっと上の世代ですけど。よく遊びに行ったなあとか。寮の部屋で先輩らとゲームしたなって…。

ゲームというのが若者らしいが率直なところ。阪神でのかけがえのない日々の思いを大事にして、米国で過ごしてほしい。

その藤浪が名前を出した梅野隆太郎の“行動”について、少々、驚いたことがある。梅野は主力選手になってから「チーム梅野」を結成。投手を中心に沖縄での自主トレを行うのが恒例。その際「TU」とロゴを入れたパーカなどを作っている。

梅野によると、そのカラーは毎年変わるそうだ。何年前だったか「黒いの、カッコええな」と言うと1枚くれた。当時の背番号「44」の入ったそれを今でも持っていることもあって少し注目しているのだが今年はグリーンにイエロー。まさに藤浪が移籍を決めたアスレチックスのチームカラーではないか。

ひょっとしてア軍に行くのを知っていたのか? 藤浪を意識してあのカラーにした? キャンプ中、そんな疑問をぶつけてみた。

梅野 それね。いろいろな人に聞かれるんですけど、全然、知らなかったですよ。本当に偶然。でも不思議な感じはしますよね。

長年、バッテリーを組んだ者同士の“超能力”みたいなものか。そんなふうに思ってしまった。その梅野、指揮官が岡田彰布に代わり、ついに「正捕手」の称号をもらった。前任者・矢野燿大は「1人の捕手でシーズンすべてを戦うのは無理」との理論だったが岡田は梅野にフルにマスクをかぶらせるようだ。はたして143試合、全イニング出場となるのか。

梅野 どうなんでしょう。その経験はないですよ。さすがに、どうなんかな。でも、そうなったら「未知の世界」ですね。

新天地に挑む藤浪と新たな起用に臨む梅野。ステージこそ離れても阪神が誇ったバッテリーの戦いは続く。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)