失礼を承知で言えば、まあまあな凡戦だったかもしれない。1回からDeNAの先発・平良拳太郎の前に安打、四球で走者は出すものの5回まで無得点。試合全体でも計11安打を放ちながら2点止まりだ。攻撃面で言えば、褒められた試合ではなかったと思う。

だがある意味、指揮官・岡田彰布の“理想”とも言える勝利だったかもしれない。それは投手を中心とした守備面で締まった内容になったからだ。投手リレーは先発・大竹耕太郎と2番手・西純矢の先発候補が各4イニング、そしてK・ケラーが1回とオープン戦ならではの継投だったが、3投手とも好投で無失点。

特によかったのは四死球がなかったことだろう。攻撃面で残塁が続き、流れが悪くなりそうなところを投手でせき止めた印象だ。そして守備面である。前日、2失策を記録した佐藤輝明に対して岡田は「横着に守備するからな」と苦笑しつつ指摘していた。

それもあって佐藤輝の守備に注目していたが、この日はしっかり処理していた。捕球から送球まで集中していた感じだ。面白いもので4回などは3者連続の三ゴロ。実戦の中の練習、今更ではあるが佐藤輝にとっては、いい経験になったかもしれない。そしてチームとしても無失策で終えることができた。

「野球でもっとも完璧に近づけることができるのは守備。チーム打率は3割に届かないが守備率は限りなく10割に近づけることができる」。これまでに岡田が残している言葉だ。

それはそのまま「1点の重要さ」にもつながっていく。就任以来、公式戦では犠打のサインを出すと強調している岡田、この試合でもそれは見せた。6回、1死一塁から熊谷敬宥にバントを命じたが、ここは二塁封殺で失敗。現状、1軍戦力と位置付けられている熊谷にとっては痛いミスと言えるかもしれない。

いずれにせよ、オープン戦。両軍とも選手起用、采配といろいろ試している中での結果であり、公式戦とは違うのだろう。それでも飛んできた打球を処理するのに、試合も練習もない。

というより、結果に関係のない試合で失策していて、「アレ」がかかったような大一番でしっかり守れるはずがないだろう。ベンチも選手も開幕まで考えることは多い。それでもまずはシンプルに「しっかりと守る」ことが阪神にとって重要だと思う。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)