話は接戦をものにした前日の試合後にさかのぼる。梅野隆太郎に少しだけ話を聞いた。打撃成績についてだ。指揮官・岡田彰布の方針で不動のスタメンを続ける今季の阪神。チーム打率は実に3割4厘と快進撃を続ける野手陣にあって、1人だけ1割5分4厘と不振なのが梅野である。
岡田から正捕手としての立場をしっかり与えられ、それを意気に感じて「守備の要」としてチームを支える状況。打撃がいまひとつ奮わなくても無理はないのかな、と水を向けたのだ。
「それは関係ないです。打席でも集中していかないといけない。でも、まだ4試合でしょ。あとどれだけ打席に立つと思ってるんですか。500打席ぐらいありますよ。今なんて1本打てば1分ぐらい変わるんじゃないですか?」
梅野はそう話していた。そして、この日である。広島戦は午後5時半という遅い時間の中止に。それを受け、梅野は志願の特打を敢行したのだ。
これを喜んだのが他ならぬ岡田だった。前日、梅野に聞いた流れがあるので「いま、打撃不調なのは梅野だけですね。気にしてないですか?」とバスに乗り込む岡田に聞いてみたのだ。
すると岡田はニヤリと笑って言った。「おうおう。特打ちするらしいで。梅野な」。それからしばらくして、室内から打球音が響いてきたのである。
志願の打撃練習に付き合ったのはヘッドコーチ平田勝男、そして打撃コーチの水口栄二。2人によればチェックポイントはスイングするときに少し背中をかがめ、突っ込んでいる点の矯正だったという。
「こういう時間を利用してね。うん。いいことよ。水口コーチがしっかりやってくれているからな。大丈夫や」。例の明るい調子で言った平田も梅野の練習を見守っていたようだ。
雨天中止でできた時間を使い、チェックを行う主力選手。それを歓迎する指揮官、そして見守る首脳陣だ。連勝しているときに「いい、いい」と書くのも普通だが、いまの阪神には前向きムードがあふれている。
4連勝で来ての雨天中止。開幕4連敗の広島にすればこれで流れを変えたいところだろうし、阪神にすれば反対だ。勝負は常に紙一重。もちろん油断はできないし、そんなことは百も承知の岡田だろう。それでも今のこの雰囲気がある限り、そう簡単にガタガタ崩れるとは思えない。(敬称略)




