ふう~っとひと息ついたというか、もっと正直に言わせてもらえば、ほんの少しホッとしたような感覚さえある。大型連勝は交流戦2試合目で西武に負けて「9」でストップした。

ここまで確かに強かった。5月末なのに9連勝で貯金は「18」にまで膨らんでいた。このまま勝ち続けるんか。どこまでいくんや。どないなってまうねん。そんなワクワクする気持ちと同時になぜか“えたいの知れない不安”も広がっていく。独断と偏見で言えば、それが阪神というチームの伝統的かつ不思議な味わいかもしれない。

もちろん勝つ方がいいに決まっている。勝てるときに勝てるだけ勝てばいいのは当然だ。だが同時に、そろそろ1つぐらい負けておいた方がいいのでは-。そんな気持ちも湧いていた。

この感覚、実は指揮官・岡田彰布も持ち合わせているようだ。以前にも書いたが岡田のポリシーに「勝負事は勝ち続けたらあかん」というものがある。

勝負には流れがあり、シーズンも同様だ。10連勝すれば10連敗する気もする-と話したこともある。その理由として、連勝中には知らず知らず選手起用で無理をする場面ができてしまい、いったん連勝が止まったとき、今度はその部分がマイナスに左右するのではないか…というものだ。

そこに加えて岡田は「勢いで勝つ」ということが好きではない。大型連勝にはどうしても「勢い」という要素が含まれる。チーム力が安定し、しっかり戦えているときに「勢い」はいらないという考えである。

現状の阪神、不安視されたブルペンの酷使のようなものもないし、野手の起用もうまく運んでいる。どこかで無理をしているという要素は特に見当たらないが、常に勝てるはずはないし、ひと息つくのにはいい頃合いだったのではないか。

などと書いておいて、おかしなもので負けると気持ちが少々変わる。失速という面でも過去に何度も経験のあるチームだけに「大丈夫か? 負け続けへん?」という不安も頭をよぎるのだ。このあたり実にややこしい。だからこそ大事なのは連敗が止まった直後の試合だ。伊藤将司がキチッと投げ、打線もつながって勝てれば、こういう気持ちも一気に落ち着くはずだ。

「でも、まあ、明日勝たなあかんわな」。久々の敗戦後にそう話した岡田。この部分に関しては虎党と同じ感覚のようだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

7回裏、ベンチの中で声を出す岡田監督(撮影・加藤哉)
7回裏、ベンチの中で声を出す岡田監督(撮影・加藤哉)