「ヒラタ、感激」といった様子だった。8日は「立秋」。二十四節気の1つで、夏の暑さの中にも秋の気配を感じ始める日…ということのようだ。しかし東京はカンカン照り。空調の効いた東京ドームの中に入るとホッとするほどだった。

そしてセ・リーグの戦いもまだまだ熱いようだ。序盤、圧倒した阪神だったが敵将・原辰徳率いる巨人もこれ以上、離されまいと追いすがる。そのギリギリの勝負を分けたのが岡田の“リクエスト”だった。

8回に出た好守の流れは虎番記者の記事でしっかり読んでいただくとして、それに感激していたヘッドコーチの平田勝男の様子を書きたい。「あの中継プレーのところですが…」というこちらの質問に感極まったように話した。

「そこを聞いてくれるんやな。そこなんだよ。本当によくやってくれた。あのプレーなんだよ。昨年の秋季キャンプからずっとやってきてね。それがこの大事な場面で出て。本当に褒めてやってくれよ。“殊勲甲(しゅくんこう)”だよ」

古めかしい言葉まで出して、褒めたたえたのは当然「85年日本一」の遊撃手としてのプライドもあるはず。岡本和真の左中間を破る当たりに近本光司がチャージし、カットマンの木浪聖也へ。そして捕手・梅野隆太郎に渡り、走者を刺したプレーは虎党だけでなく、首脳陣も魅了したのである。

もっとも、それでも、まだ発展途上ではあるという。「いいプレーなのは間違いないです。でも本当は近本はもうワンポイント速くいってほしいんですけど。そのためにキャンプからずっとやってるんだから」。外野守備走塁コーチの筒井壮は、ここでも「キャンプ」という単語を出して、厳しく話した。

重要なカットマンとして機能した木浪聖也にも聞いてみる。キャンプからやってきたことか? 木浪は胸を張ってこう言った。「そう、その通りです。いいところに投げられた。これを練習してきたんです」。

なにしろ、巨人は6回まで4安打で4得点だった。一発攻勢で攻める巨人に対し、球団の失策数は多いとはいえ、ここ一番でのディフェンス力を発揮。その結果、指揮官・岡田彰布が得意とする「1点差勝利」が展開された。本来、ブルペン陣がリードを守り切る形が1点差勝利の理想だろう。それでも、たまには、こんな試合があっていい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 8回裏巨人無死一、二塁、岡本和の適時二塁打で本塁へ送球する近本(撮影・狩俣裕三)
巨人対阪神 8回裏巨人無死一、二塁、岡本和の適時二塁打で本塁へ送球する近本(撮影・狩俣裕三)
巨人対阪神 接戦を制し、森下(左端)ら選手とタッチを交わす岡田監督(左から2人目)(撮影・狩俣裕三)
巨人対阪神 接戦を制し、森下(左端)ら選手とタッチを交わす岡田監督(左から2人目)(撮影・狩俣裕三)