不振の森下翔太が虎番の若手記者たちに囲まれる。こちらが聞くとすれば「調子悪いよね。疲れもあるのかな」などとストレートになるが同世代の若手たちはもっと丁寧だ。「久々の1番でしたが?」などとオブラートに包む。エラいな、と素直に思う。まあ、どういう聞き方をされても結果が出ていないので森下にすれば特に答えようはない。それでもキチンと対応していたのは立派である。
考えてみれば酷な話だ。社会人で言えば大卒1年目の社員。営業成績が上がらなかったり、ミスをしたりしたときに周囲から関係のない人物が出てきて「結果が出ませんが?」などと聞いてくるようなものだ。うっとうしいだろう。
だがプロ野球ならそれも仕事、年俸のうちではないか。好結果が出てヒーローになったときはお立ち台でのインタビューすらあるのだ。「ダメなときはそっとしておいて」と言ったとしても、そこはなかなか難しいかもしれない。特に阪神だ。いろいろな考えはあるだろうが個人的にはそう思っている。念のために書けば、森下はそんなことは言っていないのだが。
前日25日の試合後、指揮官・岡田彰布は大山悠輔と森下翔太、2人の右打者の名前を出してゲキを飛ばした。それを受け、大山は決勝2ランという形で応えたが森下は4打数無安打。対照的な結果になった。
「おお。そうやな。あの2人な。そこはな。まあ(森下は)まだ自分の形ができてないんやろな。そら簡単ちゃうよ。1年やっただけでな。(大山は)何べんもそういうことを繰り返してきてるからな」
岡田は少しだけやさしい口調でそう話した。虎番キャップの前では「崩れてしもうたな」と厳しく指摘していたがルーキーの苦しさ、難しさは当然、理解しているし、無理もないと思っている部分もあるのだ。
森下はいい時期に阪神に入ったと思う。球界だけでなく世の中は若者にソフトムード。できなくても「いいよ、いいよ」という感じ。厳しくしかると、しかった方が上から注意されるのはよく聞く話である。
もちろんムチャなことを要求するのは許されない。だが同時にダメなものはダメだし、緩みが見えればしっかりやれという指摘は必要だろう。昭和型の岡田は普通にそれをやるし、選手も発奮しているように見える。技術もメンタルも鍛えて、一流になってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)