甲子園ラストゲーム後、指揮官・岡田彰布はマイクを手にあいさつした。「ファンの声援がすごい力になったのは間違いありません」-。岡田にしては“よそいき”風の話しぶりだったが感謝の言葉は本物だ。
だが、この試合に限れば虎党はいささか寂しい思いをしたかもしれない。最下位に低迷する中日に圧倒された。先発した富田蓮のテストを含め、何が何でも勝ちにいったわけではないけれど内容が寂しいのだ。
打線は4回の大山悠輔が放った2ランだけ。これで3試合、本塁打による得点しか入っていない。25日中日戦(バンテリン)は佐藤輝明のソロだけで敗戦。26日ヤクルト戦(甲子園)は大山が決勝2ランを放ち、この日も2試合連弾だったが勝てなかった。3試合の得点はそれだけだ。
適時打が出ない象徴は6回か。中野拓夢、森下翔太の連打から大山が歩き、無死満塁。ここから佐藤輝明、ノイジー、そして坂本誠志郎が倒れた。つながりが特徴の今季、無死満塁から得点できなかったことなどあったかな? と記録部に確認してもらう。
1度だけあったという。それは今月14日の巨人戦(甲子園)だ。4回、無死満塁から佐藤輝が三振し、ノイジーが併殺打。ああ、あれね、と思ったがそれって優勝決定試合ではないか。なんだか不思議な感じもして、面白いが、やはりそのときとは違う。弛緩(しかん)というとよくないが、やはりギンギンに張っていたテンションが緩んでいるのは否定できない。そのあたり、岡田はどう思っているのか。
「そら、そうやろおまえ。そんなん、いっつもいっつもやれるかいな。でもなあ…。長いよな。3週間か」-。最近の口癖である「長い」がまた出た。もちろんCSファイナルまでの期間のことだ。現状、公式戦は10月4日のヤクルト戦(神宮)でラスト。そこからも18日まで空くのだ。
1度、緩んだ雰囲気を戻すのは難しい。そもそも、どこで戻すのかということもある。岡田はあいさつで宮崎フェニックス・リーグに行く予定まで説明したが、そこで緊張感を戻すのも容易ではないだろう。
もちろん再び真剣勝負の場に戻れば…と期待はするが岡田も言ったように阪神球団にとってファイナルで待ち受けるのは史上初のこと。それがどう転ぶのか。虎党にとっては期待と不安が交差する日々だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)