「そらあるわ! そんなもん!」。オリックスへの特別な気持ちはあるかと聞いたときだ。指揮官・岡田彰布は語気を強めた。「あのときのことを知ってる人ももう少ないけどな」。12年に「紙切れ1枚で解任」された古巣との対決に燃えていたのだ。
それでも最後は「オリックスは強かった」と相手をたたえた。執念深いわけではない。勝負にこだわるのだ。この試合でも5回のリクエスト、青柳晃洋の4回2/3での交代とそれは表れた。そして誰にも負けない虎党だ。茫洋(ぼうよう)とした外見だが内面は熱い。
人情家でもある。その解任のとき、最初にやったのはともに辞するコーチの就職探しだ。巨人に逆転されV逸、阪神監督の座を退いた08年も同様だった。「『オレもやめます』と言った。でも岡田さんは『やめるな』と。だからユニホームは脱いだが球団に残った」。当時のチーフ野手兼打撃コーチ、現在は九州産の監督として高校球児を指導する吉竹春樹はそう言う。
岡田 おう。止めたよ。あのときはオレがやめれば、それでエエ話やったからな。いまもそうやけど、あのときもやめたからといってすぐ仕事はないからの。
大阪の資産家の息子、北陽(当時)から早大、ドラフト1位。はっきり言って「ぼんぼん」「エリート育ち」は間違いない。思ったことをすぐ言葉にするし、それが元で誤解を招くことも。だがなんとも言えぬ温かさで周囲に人は集まる。
岡田 温かいて、そんなん、普通やろ、おまえ。特別やさしいとか、そんなん、ないよ。別に。
そう言うが、ちょっとしたときにその一面は出る。ゴルフをすれば見失った同伴者の球を率先して探す。誰より早く見つけ「ここにあるやんか」。有名人であることを考えれば、結構、めずらしい。ぶっきらぼう、「岡田語」はやや難解。それでもファンも多い。だからこその監督要請だったはずである。
「この戦力でなんで勝たれへんねん」。昨年までの評論家時代、そう言った。長い間、阪神から声がかからず、年下の指導者たちへの文句と思っていたがプランを練っていた。オレならこうする-。そこへ届いたオファーを生かした。佐藤輝明、森下翔太らの若手を老かいな技で鍛えようとしているのも頼もしい。選手で日本一、そして監督として日本一。岡田彰布は球団史に残る事実だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




