「5勤1休」が2度、続く阪神宜野座キャンプは中盤だ。2日続けて紅白戦が行われた週末は大混雑だったが、この日の観衆は約2500人と、少し落ち着いた感じだった。

その紅白戦に出場するため、ファームの具志川から合流した糸原健斗内野手。31歳をベテランと言うには早いけれど、すでにチームでは最年長の部類。11日、バスから降りたとき「宜野座におらんからやめたんかなと思った」と軽口をたたくと「何言ってんすか」と、ちゃんとムッとしてくれる。

入団8年目の糸原は即戦力の内野手として入団。過去7度の2月をファームで過ごした経験がない。若い選手も見たいし、年長者は自分のペースで仕上げてくれという指揮官・岡田彰布の考えによる今年の状況である。実際、キャンプはどちらでやるのがいいのか。そんな問いをしたときの答えに考えさせられた。

「そりゃあ1軍で練習する方がうまくなると思いますよ。見られているという意識が違いますからね。やっぱりアドレナリンが出るっていうかね」

阪神に限らず、ファンが集まるプロ野球のキャンプは柵越え1本、守備でもいいプレーが出れば拍手が飛び、歓声も。実戦でもないのにすごいことだ

一般人からすれば、反対かもしれない。たまにやるゴルフも練習場ではそこそこ打てても、コンペなど人に見られているととんでもないミスが出ることも。注目度の高い場面で視線を力に変えるのが、プロならでは、なのだろう。

特に12球団NO・1の人気を持つとされる阪神。38年ぶり日本一の昨季もあり、盛り上がっている。その前でプレーするには、視線を力に変えることができなければ話にならない。

宜野座の1軍キャンプは若い選手が目立つ。この日は期待の野口恭佑と昨季の活躍でエース格となった村上頌樹の“対決”があった。2500人だったが、その熱い視線の前で野口は張り切っていた。

キャンプ後半戦に入り、対外試合、実戦も増えていく。3月末の開幕までふるいに掛けられる時期はもうそこまで近づいている。糸原も、同様の理由でファームスタートとなった原口文仁とともに16日には1軍に合流してくる。ここから年齢は関係ない“戦い”も始まっていく。ここでファンに見られ、活躍できる選手が多いほど連覇の夢は近づく。そう思うのだ。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

シートノックで右翼を守る野口。後方左はミエセス、右はノイジー(撮影・藤尾明華)
シートノックで右翼を守る野口。後方左はミエセス、右はノイジー(撮影・藤尾明華)
川藤幸三OB会長(右)と談笑する岡田監督(撮影・加藤哉)
川藤幸三OB会長(右)と談笑する岡田監督(撮影・加藤哉)