昨年ラストゲームの興奮を思い出させる試合になった。阪神が38年ぶり日本一を決めた日本シリーズ第7戦と同じく阪神・青柳晃洋、オリックス宮城大弥の先発となったゲームはオリックスが0封勝利だ。

オリックス対阪神 オリックスに敗れて引き揚げる岡田監督(左)ら(撮影・加藤哉)
オリックス対阪神 オリックスに敗れて引き揚げる岡田監督(左)ら(撮影・加藤哉)

オープン戦、ここまで2勝の阪神はこれで2試合連続無得点となった。乱打戦となった19日ソフトバンク戦で10点を取り、打ち勝った疲労が続いているわけではなかろうが主力が万全でないのは心配だ。

この日、大山悠輔、森下翔太がそれぞれ気になるところがあって欠場。ケガがこわいのは言うまでもないが開幕まで1週間を切った段階だけに不安は募る。

そんな中、阪神打線は近本光司、木浪聖也、そして佐藤輝明と元気な主力を中心に快音を残した。記録した安打は9本。これはオリックスの6本を上回ったが西川龍馬の本塁打はあったとはいえ、0-3の結果はもったいない気はする。

なぜか。理由はいろいろあるはずだが、その1つは「四球」だと思う。昨年、いろいろなところで世に出たので虎党でなくとも知っていると思うが阪神で特筆すべきは四球の査定ポイントをアップさせたことだ。

オリックス対阪神 6回表阪神無死、佐藤輝は右前打を放つ。投手は宮城(撮影・加藤哉)
オリックス対阪神 6回表阪神無死、佐藤輝は右前打を放つ。投手は宮城(撮影・加藤哉)

「言うたよ。四球もヒット並みにしてくれって」。昨年中、指揮官・岡田彰布が話していたのを記憶しているだろう。確かに四球は単打と同じ。いや投手に気持ち悪さというかダメージを与える意味では上かもしれない。これは、まさに的を射たプランだった。

そこで、この2試合を振り返る。連続0封負けと書いたが、この試合、阪神打線が選んだ四球は中野拓夢の1だけ。20日ソフトバンク戦は1つもなかった。つまり2試合で1四球だけという事実が得点できない結果につながっていると言えるかもしれない。

もちろん、この日の宮城、さらに20日に投げた東浜巨のような好投手は、そうやすやすと歩かせてくれない。「いい投手が投げれば簡単に点は取れない」という野球の常識はそういう部分にも出るのだろう。反対に言えば、万一、主力を欠くようなゲームになったとしても、しぶとく粘っていく形で投手を攻めることはできるということだろうか。

「打てへんかったら選べっちゅうんよな」-。昨季中に岡田が発した言葉でもある。勝敗は関係ないオープン戦とはいえ、この状況が「日本一野球」の原点に戻る機会になればいい…と見ている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

オリックス対阪神 9回表阪神1死一塁、代打に糸原を告げる岡田監督(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 9回表阪神1死一塁、代打に糸原を告げる岡田監督(撮影・前岡正明)