デュプランティエは歯科医になっていたかもしれないのか。佐藤輝明はすし職人。「GWこどもまつり」の子どもインタビューは楽しい。「野球選手でなければ」との質問に思わず「へえ~」と思った。

そんな風に楽しむ余裕があったということだろう。勝ち負けだけを考えれば、序盤からこれほど楽に見られたのは今季初かもしれない。名古屋で苦しんだが、甲子園に戻り連勝。これで巨人に並び、首位タイだ。

内容もよかった。佐藤輝が先制適時打などで2打点をマークし、本塁打との2冠をキープ。森下翔太も首位打者レースでトップに肉薄する安打を放った。6回無失点のデュプランティエは来日初勝利である。

阪神にとって、いいことずくめだったゲームにも見えるが、もちろん、そうではない。試合後、口元を引き締め、足早にロッカールームに戻る選手がいた。前川右京だ。

先制した1回、2死一、二塁の追加点チャンスで三ゴロ。3回1死二塁では中飛。さらに5回だ。2死二、三塁の絶好機に空振り三振に倒れた。この日は4打数無安打。ここでは「あ~、もう!」と悔しそうに漏らしていた。

これで自身の誕生月である5月に入ってから3試合で11打数無安打。今季最長レベルと言っていいぐらいの不調にあえいでいる。とはいえ、まだ3試合だが、強力なクリーンアップの後を任される6番打者だけにふがいない思いだろう。

そんな姿を見て、ふと思い出したのはレジェンド打者で、元監督・金本知憲のことだ。金本には“ある特徴”があった。試合後、そこについて、取材というか雑談したのは金本とともにプレーした総合コーチの藤本敦士である。

「みんながみんな打たなくてもね。カネさんはみんなが打ってほしいときに打ちましたからね」-。そう。金本は他の打者が打ちまくるようなときは不思議に打たず、逆にみんなが打ちあぐねる投手を打ち崩すスゴみがあった。だから慕われたし、頼られたのだ。

まだまだ遠いが、左打ちの外野手として、前川には金本の姿が重なる。個人成績はともかく、勝敗のためには、みんなが苦しんでいるときにしっかり打てばいい。険しい顔の前川に「大丈夫かい」と声をかけると「大丈夫です!」と大声で返ってきた。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)