「前川くんが1軍におらん間に広島の前川(誠太)選手が支配下登録されて名前を売ってるぞ。“前川負け”に気をつけなあかんで」。前川右京が1軍に戻ってきた9日ヤクルト戦後のこと。京セラドーム大阪でクルマに乗り込む前川にそんな話をした。

「向こうはテンテンがないじゃないスか。こっちはありますから」。意味不明な雑談に対し、前川もニッコリ笑いながら謎の答えを返してきた。向こうは「マエカワ」でこちらは「マエガワ」か。それで優位に立てるのかどうかはまったく不明だが、こういう感じが彼の魅力でもある。

そして、この広島戦。前川は、なんと4番打者でスタメンに戻ってきた。3回に広島・床田寛樹を襲うピッチャー返しの適時打を含む2安打だ。理想としては外野に大きく打球を飛ばしてほしいところだが、まずは結果。自ら復帰を祝ったという形か。広島前川は2点適時打だったけれど。

それにしても虎党を、野球ファンをあっと言わせるスタメンだったかもしれない。2番・中野拓夢、さらに主砲・佐藤輝明が外れた。代わりに木浪聖也、熊谷敬宥が、そして植田海がいる。なかなかの変わりっぷり。坂本誠志郎はいた。

「打線はいい流れで得点に結びつけることができていたんで。いい攻撃はできていたかなと思いますね」。指揮官・藤川球児は多くを語らなかった。佐藤輝らの休養、床田との相性など、このスタメンの根拠は当然、あったのだろうが。

少しだけ気になるのは「反動」というか「揺れ戻し」と言えばいいのか、対戦結果の話だ。広島にはこれで13勝6敗だがマツダスタジアムでは試合前まで8勝1敗だった。シーズンを終えてみれば極端な差はつかないことが多い通例を考えれば、ここから先はどうなるのかな、という気はする。次カードの巨人戦を戦う東京ドームでも同じだ。

広島を得意にする大竹耕太郎が打たれ、これも大好きなマツダスタジアムで負けた。すでに阪神の独り旅はゴールが見え、どこも追いかけてくる状況ではない。それでも以前にも書いたが、他球団は「阪神を食ってやろう」というメンタルで来るのだ。

それをきっちり跳ね返さなければならない。今後、予想される短期決戦をにらんでもそうだ。まずは13日の広島戦。ここは勝敗というより、どっしりと戦いたい気はする。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)