「2番・二塁」で今季2度目のスタメンとなった植田海に聞いてみた。ここはヒット打ちたかったねえ? 植田は苦笑を浮かべながら、力を込めてこう言ったのだ。「打ちたかったですよ~。4タコやし。まあ(四球で)塁に出れたからよかったですけど」-。

今季は途中出場で1安打を放っているがスタメンでは安打はない。7回先頭で四球を選び、貴重なダメ押し点のホームを踏んだが「ヒット打ちたい」のは野球選手の本能だろう。その植田について、先日、球団関係者と話していたとき、こんなフレーズが出た。

「植田海のFAってすごくないですか?」。そうそう。すごいよね。思わず、そう言ったものだ。細かくは書かないがFA権を取得するのはプロ野球選手にとって1つの勲章と言える。現行の条件はざっと言えば「1軍145日の登録で8シーズン」。つまり8シーズンの間、ほとんど1軍にいなければいけない。少し前に聞いた話だとプロ選手の平均現役年数は9年らしいので8シーズンというのは大変である。

そこまで書けば、非常に失礼だけど、植田がその権利を取得したことの“すごさ”が分かるのではないか。過去一番多く試合に出たのは18年の104試合。もっともレギュラーに近い年だったが、それ以降、そういう状況にはなっていない。

言うまでもない代走要員、足のスペシャリストとして今がある。指揮官・藤川球児になった今季もその存在感は大きい。多くの選手がファーム調整に行ったが森下翔太や佐藤輝明らのレギュラー組以外でずっと1軍にいるのは植田ぐらいでは、という気もする。

7月3日の巨人戦(甲子園)では森下の代走で9回に出場。豊田寛の犠飛でサヨナラ生還している。そのとき球児は、かつて巨人の足のスペシャリストだった鈴木尚広の名を出し、こんな話をしていた。

「植田はFAをとっていますから。すごく大事な選手ですよ。現役のときに巨人に素晴らしい代走の鈴木選手がいて。うちの今のベンチはみんなで戦っていくところ。いい活躍でした」

そんな植田と、これも今季クローズアップされている熊谷敬宥の二遊間もシブかった。8回に登板した岩崎優が先頭打者に安打を許したが直後に上林誠知を「4-6-3」に切る。うまいトスだった。強い今季の阪神、脇役も光るのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 8回裏中日無死一塁、上林の打球を処理した植田(右)は熊谷と併殺を完成させる(撮影・上田博志)
中日対阪神 8回裏中日無死一塁、上林の打球を処理した植田(右)は熊谷と併殺を完成させる(撮影・上田博志)