「お~い。決めるのは明日(7日)か、そうでなかったら11日にしてくれんか。用事があって甲子園にこれんかもしれんのや」-。試合前の練習時間、阪神ベンチにどっかと座り、そんなことを言っていたのは前OB会長・川藤幸三だ。
相手は指揮官・藤川球児である。「そうなんですか? 調整できますかね。7日の先発は誰でしたっけ? 才木(浩人)か…」。大先輩の顔を立てて? 球児はそう返していた。
言うまでもないが、すべてジョークというか“話としての話”である。いつ優勝を決めるかなどというのは、人間でも、それこそAIでも計算してできることではない。「勝とう」と思って勝てるわけではないし、その逆もそうだろう。
あらためて思うのは、いま、阪神の周辺にはそんなことを口にできる「ゼイタクで幸せな時間」が流れているということだ。歓喜の瞬間は目の前。あとは、それがいつになるかだけ。シーズン中「1つ1つ」と言ってきた球児も、もう隠さない。ここまでくれば間違いないのだ。しかも、まだ、それは決まっていない。まさに至福のときと言うしかないだろう。
この試合も阪神の流れを止められない展開だった。先発の若い門別啓人は4回1失点とはいえ7安打、2四死球を出し、パッとしなかった。それでも敵失もあり、中野拓夢、森下翔太、そして佐藤輝明と中心打者が打点を積み上げての今季77勝目である。
そして同22度目の逆転勝利だ。ちなみに逆転負けも22敗。さらに言えば「監督の責任」と言われる1点差のゲームはここまで22勝22敗。何やら指揮官の背番号がチラつく。
この日は阪神にも2失策が出て、満点という内容ではなかったかもしれないが相手のスキをつく勝負強さは見せた。闘将・星野仙一は「結果オーライの時期はある」と言ったもの。序盤なら勝っても反省しなければならないが、もうここまで来れば勝てばいいのだ。
もちろん区切りがつけばポストシーズンへ向け、考えることはあるはず。それでも今はゴールインが最優先だ。それがきょう7日になるのか。その場合は90年の巨人(9月8日)を超え、2リーグ制以降の「プロ野球最短記録」となる。いずれにせよ調整はできない。それが楽しいのだ。「さあ、いくかというところ」。球児は「M1」を受けて、そう言った。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




