姿を見せると一気に周囲のムードが変わるのは、さすがに笑福亭鶴瓶である。落語家と言うより老若男女が知るタレントだ。野球記者になる以前、30数年前は芸能面の演芸・演劇を担当していた。まだ若かった鶴瓶にも何度か取材させてもらった経験がある。
今回の沖縄入り、偶然にも飛行機が同じだった。那覇空港の荷物受け取りカウンター。ぐるぐる回る間に少し会話する機会を得た。「覚えてはれへんと思いますが…」とそっとあいさつすると、しばらくして「あ~! 阪神のとこにも行きまっせ!」。そして、この日の登場となった。
実は野球記者になって以降も会ったことがある。ある球場で、だ。「阪神ファンでしたっけ?」と聞いたら「そうですねん。でもね。あんまり言うてませんねん」。そう。虎党をアピールするタレント、有名人が少なくない中で、この人はその“色”をほとんど出していなかったのである。
それがこの日はベンチに足を運び、ナインにかけ声まで。虎党であることを明かすことになった。こういう事態になったのは指揮官・藤川球児との関係が大きいかもしれない。
2人は以前から関西テレビで不定期に企画する「鶴瓶×球児 スポーツな噺」という番組で司会を務めている。リーグ優勝した昨年も放送された。その関係を通じ、鶴瓶は球児についてこう話す。
「あの人は賢いでっせ。モノをよう考えてはる」-。活動する畑も違い、年齢は親子ぐらい離れているが通じるものがあるのか。球児も虎番キャップたちの取材に「自分もまだ若いですし。鶴瓶さんのような偉大な方々の笑顔を見るとうれしいです」と言った。
今季も強い下馬評の阪神だが、正直、そう簡単ではないと思っている。石井大智の故障離脱が大きいのは言うまでもない。さらにWBCで主力選手がチームを離れ、調整についての心配も。外国人を始め、新加入選手の見極めもどうか。指揮官が考えることは多いはず。それもあってかこのキャンプでは厳しい表情が目立つが、この日ばかりは笑顔が多かったように思う。
「鶴瓶さんが『(球児は)賢いで』って言うてはった」。帰り際、球児に声をかけると「そんなことないですよ!」と笑った。勝負はまだ先だが、考えに考え、どう戦っていくのか、プランを、作戦を練る日々は続いていく。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




