まったりした空気が流れたのは新加入のルーカスが打者との対戦形式での投球練習をしているときだ。ランチ・タイムに行われたこの練習、ルーカスは伏見寅威を捕手とし、打者7人に18球を投げた。
ここでマウンドを降りたのだが、そのまま状況が変わらないのだ。投手チーフコーチ・安藤優也らは打席付近にいるし、前川右京らの打者もその辺りで所在なさげにしている。
阪神キャンプでは「選手が何もしていない時間」というのはあまりない。広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が初めて阪神キャンプを視察したとき「きっちり時間を使っている」と感心したように、他球団と比べても優れた部分かもしれない。
だが、この日は不思議な時間が流れた。そして約10分ほど経過した後、ルーカスが再びマウンドへ上がる。捕手は梅野隆太郎に代わり、打者5人に20球。あるテレビ局のクルーはセンターに据えていたカメラを外しそうになったようで「終わったと思ったがまだだった」ということだ。
野球に詳しい方なら、すでにお分かりだと思うが、これは「イニングレスト」、つまりイニングの間、味方の攻撃時間を想定して時間を取り、再び投げるというもの。先発投手候補の練習では他球団でもたまにあることだ。そういう場合でも2投手が交代で投げたりすることが多いので、この日は不思議な感じも漂ったのである。
「イニングレストという米国のやり方に近いと言いますか。打撃投手のこともだいぶ前から『ライブBP』と言いますし『シミュレートゲーム』との呼び方もしますから」。指揮官・藤川球児はそう話した。
確かにライブBPという言い方はここ数年で使用され始めた。それまでは「フリー打撃に登板」などという表現だったと思う。「シミュレートゲーム」は、野手を配置した、いわゆるシート打撃のことだ。
「(練習の)全体像を見ていた時期はアメリカでの方が多かった」。球児はそうも話す。大リーグを経験した指揮官として、特に来日したばかりの投手に配慮したとも言える。
古い人間としては用語の変化に、正直、戸惑う部分もある。それでもトシを重ねてもアップデートは重要。でも、もっと大事なのは結果…ということは今も昔も同じ。キャンプも終盤、オープン戦の時期に入る。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




