トラブルの芽を摘んだのは敵将・池山隆寛のファインプレーだろう。8回、木沢尚文の投球が森下翔太の頭部付近に抜け、四球に。このとき指揮官・藤川球児が三塁ベンチから出た。すると池山は一塁ベンチから素早く出て、帽子をとって謝罪したのである。直前に木沢が岡城快生に死球を与えていたこともあっての行動だろう。

これに球児も笑顔を浮かべ、応じた。池山は12球団最年長の還暦監督である。対して45歳の球児はセ・リーグ最年少監督だ。ひと回り以上年長の人物からの明確な意思表明。球児は「代走を告げに行っただけですよ」と話したのだ。

「(打者に)当てに来てるのか投手の球が抜けてるのか。その違いは分かりますよ。プロなら」。死球について球児からそんな話を聞いたのは昨年のこと。だから木沢の投球も頭では分かっていたと思う。それでも岡城が死球を受けたときには、思わず感情が出てしまったのだろう。

それほど岡城のデビューぶりが鮮烈だったということだ。初安打が決勝打といきなりヒーローとなった前日に続き、この日は初の猛打賞である。その5打席目が死球になった。「おいおい」と一瞬、頭に血が昇ったのではないか。

昭和の野球なら普通にあったことだと思う。若い選手が上り調子になってきたら「腰、引かせたれ」とばかり、きわどいところに投げたというような話はよく聞いた。現代では選手の気質も変わり、そういうことはないはず。それでも、そういうことを感じさせるほど岡城が目立ったということかもしれない。

ルーキーの活躍が象徴する文句なしの勝利だった。ベテラン西勇輝は先制点に守られ、うれしい勝利。そして前日、このコラムで触れた佐藤輝明にも待望の1発も出た。とにかく試合に出ている選手みんなが力を発揮し、生き生きしている。いい感じだ。

4月最後のゲームを快勝で決めた阪神。3、4月は27試合で17勝9敗1分けの貯金8と上々のスタートである。リーグ制覇した昨年の3、4月は26試合で14勝11敗1分けの貯金3だった。

この3連戦でヤクルトに「やはり阪神は強いぞ」と思わせたことも大きい。初戦はイヤな負け方だったがそれを取り返し、しっかり勝ち越して力を見せつけたのである。5月は甲子園の巨人戦からだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 8回表阪神1死一塁、森下翔太の四球にベンチを出る藤川球児監督(中央右)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回表阪神1死一塁、森下翔太の四球にベンチを出る藤川球児監督(中央右)(撮影・足立雅史)