専大北上の5番熊谷真人内野手(2年)がサヨナラ本塁打を放ち、8強入りを呼び込んだ。1-1の延長11回1死から右越えに2試合連続アーチをかけ、大東を退けた。

 ひと振りで延長戦に決着をつけた。パワーアップした熊谷が1ボールからスライダーを捉えた。「ファーストストライクを思い切りたたこうと思った」。左打席からフルスイングした打球は、右翼スタンドで弾んだ。3回戦(対水沢第一)から2戦連発。06年以来9年ぶりの甲子園に夢をつなぐ、劇的なサヨナラ8強入りを呼んだ。

 専大北上の方針「食べる」が生んだ1発だった。春からおにぎり3個を授業の合間に、昼休みは食品保存容器に詰め込んだ白米を平らげた。今春の地区大会63キロの体重は、この夏は12キロ増の75キロ。「飛距離が伸びた感じがした」と話す。3回戦が公式戦1号。身長168センチと小柄でも球を遠くに飛ばす力がついた。

 住田との初戦2回戦は、2点を追う9回に同点適時打。窮地を救って直後のサヨナラ勝ちにつなげた。及川将史監督(30)は「2年生だけどキャプテンのようなイメージ」と厚い信頼を置く。県外の選手が多く集まる中、地元・北上市生まれ。昨秋から、授業前に学校の中央玄関を掃除することを日課にする。「地域から応援される選手になりたいので」と照れながら話す。校内では野球以外でも評判は高い。

 春の県大会2回戦で5回コールド10-0と圧勝した大東を、苦しみながらも撃破した。今日20日はその春に4-5と敗れた盛岡大付と、くしくも同じ準々決勝で再戦。700人を超える全校応援の後押しを受ける。「この流れでガンガンいきたい」と自信をみなぎらせた。1年生で既にレギュラーとなった昨夏は、準決勝で涙をのんだ。「地元の強豪から甲子園へ」と専大北上の門をたたいた熊谷の15年夏は、まだまだヒートアップする。【久野朗】

 ◆熊谷真人(くまがい・まこと)1998年(平10)9月25日、岩手県北上市生まれ。黒沢尻東小4年の時、黒沢尻東スポーツ少年団で野球を始め内野手。北上中では軟式野球部に所属し、2年の時に岩手県選抜入り。専大北上では1年夏からレギュラー。168センチ、75キロ。右投げ左打ち。家族は両親と姉、弟。