九州王者の秀岳館(熊本)が逆転サヨナラで春夏通じて初の4強に進出した。8回まで2安打無得点に抑えられていたが、1点を追う9回2死から2点を奪うミラクル勝利で、木更津総合(千葉)を2-1で下した。

 秀岳館が劇的サヨナラ勝ちで初の4強進出だ。執念で同点に追いついて迎えた9回2死一、二塁。「自分で決めてやると思った」。7番堀江航平内野手(3年)がこの日初めて指3本分バットを短く持って強振した内角低め直球は、歓喜の中越え二塁打に。打った瞬間のことは必死すぎて覚えていない。だが一塁をまわり拳を突き上げガッツポーズ。ベンチを飛び出したナインと笑顔をはじけさせた。興奮を隠せない堀江が「サヨナラ打は覚えている限り初めて。一生の思い出です」という値千金の一撃だった。

 元松下電器(現パナソニック)監督や25年間高校野球解説者を務めるなど豊富な経験を生かし、就任から3年以内の全国制覇を狙う鍛治舎巧監督(64)の指導で鍛えられた実力の証しだ。堀江は「90球以降、球が浮き出し狙い球の見極めができた」と振り返る。攻略の兆しを見逃さなかった。最終回の円陣で九鬼主将が「今まで頑張ってきたことを、今出すんや」と猛ゲキを飛ばし、全員が奮い立った。

 木更津総合・早川の投球傾向はストライクゾーンを9分割したデータ分析で伝えられていた。だが8回まで緩急でコーナーを突く投球に翻弄(ほんろう)され、2安打に抑え込まれた。それでも指揮官の「後半勝負」の読みは当たった。

 9回、2人が四球で出て迎えた2死一、三塁からのワンチャンスをものにした。一握り短くバットを持ちすり足に変えた6番広部が「とにかく打ちたくてフルスイングした」と土壇場で追いつく右前適時打。選手個々の工夫で突破口を見いだしたミラクル逆転劇に、鍛治舎監督は「本人が考えて打ってくれた。今日はデータではなく選手の気持ちでした。選手に感動しています」と成長に目を細めた。9回に先頭で四球出塁の2番原田は「次も一戦必勝です」。30日準決勝は明治神宮覇者、高松商を撃破し頂点を狙う。【菊川光一】