第98回全国高校野球選手権の岩手大会(7月8日開幕)の組み合わせ抽選会が24日、盛岡市内で行われ、東北6県の組み合わせがすべて決まった。今春のセンバツで1勝を挙げた釜石は、菊池智哉主将(3年)が開幕戦を引き当てて遠野緑峰と激突する。2回戦で第1シードの一関学院と当たる激戦ブロックに入った。右肘痛を抱えるエース右腕・岩間大投手(3年)をセンバツ後に温存。先週の秋田遠征から本格的な実戦投球を始め、夏本番に間に合わせる「逆算調整」で春夏連続出場を狙う。

 開幕戦に決まった瞬間、抽選会場にいた佐々木偉彦(たけひこ)監督(32)は、思わず額に手を当てた。と同時に、監督としての血が騒いだ。「やっぱりウチの主将は持ってますね。面白い組み合わせで楽しみです。まずは1回戦から」。勝てば2回戦で当たる一関学院の名前を出すことなく、目前の勝利を渇望した。

 センバツ後は低空飛行が続いた。岩間を温存した春の県大会は一関工相手に初戦敗退。チームの士気が上がらない中、今春の練習試合は29戦5勝と苦しんでいるが、佐々木監督に焦りはなかった。「いかに岩間を夏にベストな状態で投げさせられるか。1度ピークをつくると後は下がるだけ。春でもないし、夏の1回戦でもない」。センバツ直前の練習試合は9戦全敗だったが、それは小豆島戦にピークを合わせたためで、結果的に勝利に結びつけた。甲子園で勝つための逆算は始まっている。

 先週の秋田遠征で岩間が本格的な投球を開始した。2連投し、計8回1失点だったが「制球がまだまだ。これからもっと良くなる」と岩間は納得していない。開幕戦までの2週間でフォームを固め、投げ込みでピークを合わせていく。エースの存在感を再認識した佐々木監督は「テンポもいいし、守備も守りやすい。岩間が投げるとチームが変わる」と絶賛した。

 今でも右肘に痛みが残るエースの力投なくして、春夏連続出場は見えてこない。岩間は悲壮な決意を口にした。「甲子園は楽しかったけど、悔しさも残った。あの悔しさは甲子園でしか晴らせない。野球は高校が最後だと思う。甲子園に行けるなら(右肘が)壊れてもいい。もう一生投げられなくてもいい」。自分の右腕を犠牲にしても、この夏は誰にも譲れないし、譲らない。それだけの覚悟が、今の岩間にはある。【高橋洋平】