春1度、夏3度の計4回の甲子園出場を誇る古豪仙台商が、83年以来33年ぶりの聖地を狙う。春の県大会は8強に進出。準々決勝で春の地区大会で勝った東北に6-7で延長10回サヨナラ負けを喫したが、その後に東北は東北大会で優勝。東北王者と互角の力を誇っている。今年は初の甲子園出場となった67年のセンバツ前につくられた部歌「ファイト仙商」誕生50年の節目の年で、勝った時のみ歌われる3番の歌詞が新たにつくられた。初戦は14日、白石と鹿島台商の勝者と対戦する。

 「勝利のナイン」を熱唱する。6月に「ファイト仙商誕生50年を祝う会」が仙台市内で行われ、300人以上の卒業生が集結した。作詞作曲をした同校野球部OBで建築家の篠田次郎氏(83)から、勝利を歌った3番の歌詞を託された。捕手で4番の天野佑吏主将(3年)は「1番は攻め、2番は守りの歌。勝ったときに歌う歌がないから甲子園に行けないんだと説明されて、なるほどと思った」と素直な感想を口にした。14日の初戦に勝てば公式戦初披露となり、甲子園へ行くには6回歌わなければならない。

 創部96年目を迎えても、伝統の「仙商野球」は健在だ。2年生エース左腕の乙戸詠央(おつど・ながひさ)投手が鉄壁の守備をバックに最少失点に抑え、攻撃では「ワンヒットツーベース」を掲げて相手の隙を突く。堅守をベースにした機動力野球を展開し、東北とは今春の公式戦で1勝1敗。順当に勝ち上がれば決勝で当たる。天野は「上を見ず、まずは1戦必勝。決勝で東北を倒して、気持ちが晴れた状態で甲子園に臨みたい」と意気込む。

 脈々と受け継がれてきた伝統がある。今でも練習前には全部員が一緒になって部訓を読み上げる。67年のセンバツ出場後に、公立が私立を倒して甲子園に行くために当時の若生久仁雄監督(故人)が12箇条の部訓をつくった。主将として毎日声を張り上げる天野は「いつも気が引き締まります」と背筋を伸ばす。68年に導入された宮城県唯一の赤いアンダーシャツは全国制覇を祈願して、深紅の優勝旗と同じ色に似せられた。赤いソックスの白い3本線は3度の夏の甲子園出場を意味する。

 「ファイト仙商」の歌詞は生徒手帳に載っており、50年も全校生徒や卒業生に歌い継がれてきた。走者が得点圏に進むと「狙いさだめ バット振れば」から始まる1番が熱唱される。天野は胸を張る。「聞こえてくると、ここでどうにか1本打ちたいなと、背中を押してもらえる。甲子園に届かなかった先輩たちの思いを良いプレッシャーに変えて、赤いユニホームの伝統を輝かせたい」。燃える血潮と同じ色の戦闘服をまとった「赤い軍団」が「ファイト仙商」のリズムに乗って躍動する。【高橋洋平】