岩手に剛腕が現れた。先発した千厩(せんまや)の背番号11右腕・千葉英太投手(2年)が、一関高専の打者16人から6者連続を含む13個の三振を奪って5回1安打無失点。5回1死に安打を許すまで完全投球を披露し、10-0の5回コールドで初戦を突破した。14日の3回戦は、宮古工と大船渡東の勝者と対戦する。

 「岩手のドクターK」襲名をド派手に飾った。千葉が右上手から豪快に投げ下ろす伸びのある直球と、鋭角に曲がるスライダーに、バットがかすりもしない。13個の内、12個を空振り三振で奪った。「直球のキレが良くて、制球も良かった。最初から三振は狙っていた。初戦をコールドでチームに勢いを与えたかった」。5回1死まで完全投球も、ボテボテのショート内野安打を許し「ヒットを打たれたのは悔しくない。気を取り直して三振を狙った」と豪語するぐらい、この日の千葉の勢いは止まらなかった。

 172センチ、63キロの体を目いっぱい使って投げ込む直球の最速は4月に計測した138キロ。昨年より7キロも増したのは「フォームに迷いがなくなったから」。昨秋の栃木遠征で2段モーションを指摘され、冬の間は走り込みと下半身強化にあて、春にフォームが固まった。「当時は左足を止めてタメをつくっていたけど、今は軸足となる右足でプレートを蹴る感覚をつかんだ」。スパイクのつま先に穴があくほど右足の“蹴り”を意識することで、伸びのある直球が生まれた。

 亡き祖父に勝利をささげた。熱心に応援してくれていた祖父哲平さんが5月11日に亡くなった。千葉は「自分の背番号が11で、弟の背番号が5番で何か縁を感じます」と感慨深げに語る。藤沢中3年で軟式野球部の弟哲太さんの背番号を組み合わせると、祖父の命日になる。父成哲さん(40)は「英太の思いは伝わっていると思う。祖父に見せてあげたかった」と、スタンドから息子の勇姿を見守った。

 14日の3回戦に向けて、千葉は胸を張った。「次は今日よりもっといい投球を見せたい。公立の千厩で甲子園に出て、無理やりにでも直球のスピードを上げて将来はプロにいきたい」。自分の未来は、自分の右腕で切り開く。【高橋洋平】

 ◆千葉英太(ちば・えいた)1999年(平11)8月12日、岩手・藤沢町生まれ。藤沢小3年から野球を始め小5以来投手一筋。藤沢中では軟式野球部に所属し、県大会出場はなし。千厩では1年夏からベンチ入り。172センチ、63キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、弟2人。