今春のセンバツで1勝を挙げた釜石が、第1シードの一関学院相手に延長13回で1-2と敗れ、春夏連続の甲子園出場を逃した。先発したエース右腕・岩間大投手(3年)が13回1死満塁から中犠飛で勝ち越しを許した。9回2死に5番新沼康大内野手(2年)が右中間三塁打から本塁へ突っ込むが、相手の好守備でアウト。サヨナラ勝ちの機会を阻まれるなど壮絶な戦いを繰り広げたが、あと1歩届かなかった。

 本塁打を打ち合えば、好返球でやり返す。最後に散ったのは釜石だった。犠飛で勝ち越された直後の延長13回裏2死一、二塁。代打の菊池智主将が空振り三振に倒れ、二塁上で終戦を迎えた岩間はぼうぜんと立ち尽くし、泣きながらベンチ前に整列した。「大尻がホームラン打ったり、みんなが一生懸命守ってくれたけど、最後は自分の弱さが負けにつながった」。ベンチ裏では号泣しながら、死闘を振り返った。

 夏6度の出場を誇る一関学院相手に、一進一退の攻防を繰り広げた。4回裏に捕手の3番大尻が先制本塁打を放つが、直後の5回表に岩間が相手エース大竹樹希哉(3年)に同点本塁打を浴びた。「高めの直球が甘く入った。ホームランを打たれなかったら勝ってた試合」。9回表2死二塁には右前打を浴びるも、右翼手の佐々木航がダイレクト返球で本塁タッチアウト。鉄壁の守備陣が、流れをつくってきたはずだった。

 結果的に9回裏のワンプレーが勝敗を分けた。2死から右中間三塁打を放った5番新沼が中堅からの返球を二塁小椋元太(2年)がファンブルする間、本塁を狙ったが間一髪アウト。小椋のミスから一転、好返球でサヨナラ勝ちを阻止された佐々木偉彦(たけひこ)監督(32)は「新沼が三塁を踏んだ瞬間にエラーしていた。あそこから投げて間に合ったのは小椋君のビッグプレー」と悔しがった。

 右肘痛を抱え、9回からは足がつりかけながらも必死に投げ続けた岩間の夏が終わった。「最高の仲間と野球ができて良かった。春行けたのは最高の思い出だけど、あの熱気で投げたかった」と最後まで甲子園に執着するのがエースの意地。春夏連続出場は逃したが、センバツで1勝を挙げた釜石の「鋼鐵の意志(はがねのこころ)」は、存分に見せつけた。【高橋洋平】