念願の勝利の歌を響かせた。仙台商が7-4で白石に競り勝ち、夏の初戦を突破した。甲子園出場春夏通算4回の古豪の部歌「ファイト仙商」に今夏より勝利の喜びを歌う3番の歌詞が新設。勝利しなければ披露されないという重圧を、天野佑吏主将(3年)を中心にはねのけた。目標は甲子園で勝利し、熱唱すること。部歌誕生50年の節目の夏に、新しい歴史の1歩目を刻んだ。

 闘う君の歌だ。8回2死三塁。打席に立った仙台商・天野はスタンドからの歌声に耳を傾けた。「狙いさだめ バット振れば たまは遠く 青空のかなた」。部歌「ファイト仙商」の攻めの1番だ。狙い球はスライダー。カウント2-1から内角に入った4球目に反応した。「後ろにつなぐ意識でコンパクトにうまく打てた」。打球は曇天の空を切り裂き、左前へ落ちる。7点目の適時打。食い下がる白石にとどめを刺した。

 勝利への糸をたぐり寄せた。スタンドの熱唱を聞きながら放った一打。「言葉にできないんですけど背中を押されるんです。鳥肌が立つというか、ファイト仙商が聞こえると気持ちを楽にしてくれるんです」と話す。球場に響き渡る声は、1人でグラウンドに立っているわけでないと安心感をくれた。1番の歌詞の終わりは「仙商 仙商 打撃のナイン」。10安打7得点の試合結果を導いていた。

 時代を作ろうと、重圧があった。部歌誕生50年で、勝った時に歌う歌がないと新たに作られた3番。裏を返せば、勝たなければ歌えない。「私たちの代でできて歌えないというのは嫌だった。どうしても勝って、3番を披露したかった」と力みがあった。2年生エース乙戸詠央投手(2年)は「投げ急いだ感じがあった」と4回に4失点。必勝を期するあまりにリズムを崩した。だが、「ファイト仙商を(宮城優勝までの)6回聞くためにがんばろうと思った」としのぎきった。

 試合終了後に高らかに歌い上げられた3番。天野はベンチの片付けをしながら、思いを新たにした。「3番も(09年に共学になってからの)新校歌も甲子園で歌っていない。全国の仙商ファンに披露したい」。

 「打って走り ホーム目指し 確かな一歩 勝利の得点 守り固め 投げて 仕留めて 仙商 仙商 仙商 勝利のナイン」

 初めて歌えた勝利の歌。83年以来の聖地へ、宮城の夏のヘビーローテションを目指す。【島根純】