24イニングを1人で投げ抜いた。小牛田農林・加藤優投手(2年)が、前日16日に延長15回引き分け再試合となった名取戦に2日連続で先発。195球を投げての連投となったが、テンポの良い投球で9回8安打2四球2失点と好投。116球で再び完投し、6-2で勝利した。雨の振る中、2戦合計で311球の熱投。内に秘める闘志を武器に、今日18日の柴田戦(コボスタ宮城)も3日連続の完投に挑む。

 打ちつける雨音のように、一定のリズムで小牛田農林・加藤は投げた。足元をならし、サインを確認するとスッと投球動作に入る。振りかぶらず、力感少なくポンポンとリリースする。表情はほとんど変わらない。淡々と映る2年生エース。だが胸の内は違った。「まずは1勝したい。気持ちで最後まで投げました。肩は張っていたけど、勝ちたい気持ちが強かった」。チームで投手はわずか3人。投げ抜く覚悟があった。

 首の皮一枚でつないでいた。16日の試合は1点を追う9回2死走者なしから相手の失策もあり、同点に追いついた。粘ってつかんだ再試合。相沢貴裕監督(44)は「1回負けているようなもの」と開き直りに近い感覚があったと話すが、「試合は終わっていない。再試合で満足するな」と鼓舞。苦しい台所事情もあり、加藤に試合を再び託した。

 シンプルに調整し、2日目に挑んだ。前日、延長15回を投げ終わったのは午後0時52分。この日の午前9時開始まで休めるのは20時間しかない。球場から帰宅すると整骨院で体をマッサージ。午後6時半に夕食を取り、午後9時には眠りについた。「疲れをどうやって取るとか考えられず、寝ました。夕食は刺し身。赤身のマグロありました」。195球のダメージを減らすために食べて、寝た。

 8回、ポーカーフェースが崩れた。普段は「静かなタイプ。でも秘めた闘志があって、頼もしい」(桜井猛主将)な無口キャラ。それでも2死一、二塁の危機を迎え、打者をにらんだ。5球目。スライダーで空振り三振に仕留めると、ほえた。「性格的に感情を出したりしないんですけど、点をやりたくなくて」と気迫で勝利をたぐり寄せた。

 2日合計で投球数は311球。今日18日も再び登板する予定だ。「3連投の経験はないけど、最高のピッチングをしたい」と心はたぎる。マウンドは誰にも譲らない。【島根純】