福岡大会ではシード校の祐誠が6-3で筑陽学園を下し、4年連続でベスト16に進んだ。同校OBの中日若松駿太投手(21)を兄に持つ悠平内野手(3年)が、先制三塁打を放つなど4打数2安打の活躍で、チームの勝利を導いた。自慢の堅守に加え、今夏打率も5割超と絶好調。尊敬する兄の存在を励みに、兄もできなかった夢、甲子園出場へ突き進む。

 兄譲りの野球センスで、5番・若松が先制パンチを見舞った。4回2死二塁。カウント2-1で「打者が有利なカウントだったので、直球を狙った」。強振した打球は中堅手の頭上を越え、その間に俊足を飛ばして三塁へ。ガッツポーズが飛び出す会心の適時打で流れを引き寄せた。2回にはチーム初安打をマーク。同点とされて迎えた8回1死一、二塁では、三ゴロもヘッドスライディングで併殺を阻止するなど勝利への執念を見せた。

 若松の言葉もチームに力をもたらした。同点の9回先頭打者の7番・菰原(こもはら)力也外野手(3年)は若松から「打って来い、頼んだぞ」と鼓舞されて打席に入ると、変化球をとらえ、左越え勝ち越しソロ本塁打を放った。投手を務めた経験もあるムードメーカーの三塁手として攻守で声を出し続け、守備では今夏3戦無失策。打率も13打数7安打の5割3分8厘という若松に金城清忠監督(59)も「ヒーローですね」と目尻を下げた。

 小1で野球を始めた時から家の庭で打撃練習やキャッチボールをしていた。「一番身近な目標」という尊敬する兄を追いかけ、同じ祐誠に進学した。今年、兄が交流戦のソフトバンク戦で勝利した試合はテレビ観戦。その翌日に自宅に帰った兄と一緒に食事をし、夏へ気持ちを高ぶらせた。

 チームの夏最高成績は07年の4強だ。8強のかかる5回戦はシード校の希望が丘が立ちはだかるが「練習試合で2度勝ったが違うチームになっていると思う。見つめ直して残りをやっていきたい」と若松。最後の夏は初戦敗退だった兄はもう超えている。夢舞台の甲子園まで、チームをけん引し続ける。【菊川光一】

 ◆若松悠平(わかまつ・ゆうへい)1998年(平10)5月25日、福岡・久留米市出身。安武小1年時に安武ジュニアクラブで野球を始める。筑邦西中時代は久留米ペトリオッズに所属。祐誠では1年秋からベンチ入りし2年秋から三塁手でレギュラー。50メートル走6秒5。趣味は魚釣り。祐誠出身の兄駿太は中日投手。180センチ、75キロ。右投げ右打ち。

 中日若松(母校・祐誠が弟の活躍もありベスト16入り)は、「起きたら母親からのLINEで知りました。すごい。僕は(高校3年の夏)初戦敗退なので。弟は投手もやっていたけど、僕より球速遅くて。この間、実家に帰ったら悩んでて『中途半端になるなら、得意な方を選べばいいんじゃない』とは言ったんですよね。頑張ってほしいですね」。