大曲工が角館を破り、創部54年目にして初優勝を飾った。5回までに6点を失い、準々決勝でノーヒットノーランを達成した小木田投手に要所を抑えられる。しかし、3-7で迎えた8回裏、5安打に野選と敵失を絡めて一気に5点をもぎ取り、8-7で逆転勝ちした。準決勝までチーム打率1割6分と調子の出なかった「花火打線」が、最後の最後に大輪の花を打ち上げた。昨春センバツに続く、2度目の甲子園出場だ。

 信じ続けてきた野球が実を結んだ。9回表2死一、三塁。相手1番を中飛に仕留めて1点リードを守り切った選手たちは、雄たけびを上げてガッツポーズ。就任22年目の阿部大樹監督(45)は「最後まで諦めるな。やり切るんだ。そればかり言っていました。日頃の努力のたまもの」と選手たちの健闘をたたえた。

 大曲工の「仕掛け花火」が土壇場で火を噴いた。準決勝までチーム打率1割6分と低迷していた打線は4点を追う8回裏、最速147キロの相手エース小木田を攻略した。二ゴロを挟む5連打で1点差とし、なお1死二、三塁。8番加藤の投ゴロに三塁走者・浅利が突っ込む。タイミングはアウトだったが、相手捕手から球がこぼれ、一塁側ベンチ方向を転々。その間に二塁走者・高橋陽が勝ち越しホームを踏んだ。直前に二盗を決めていた主将の高橋陽は「いい投手なので攻めていった。みんな思いを一緒にして戦えた」とチーム一丸を強調した。

 3番守沢ら、1勝した昨春センバツでベンチ入りしたメンバー6人が残る。だが昨夏は初戦で西目に惜敗(8-9)。その西目戦の初回に打球を追って左中間フェンスに激突して病院に運ばれた守沢が、この日は初回に先制打。8回も好機を広げる安打を放ち、最終回はウイニングボールもつかんだ。「チームに迷惑かけたので、この仲間でもう1度甲子園に行きたかった」と笑顔を見せた。

 捕手の浅利は鈴木、佐々木、藤井の3投手をリードし、準決勝まで4試合で計5失点の堅守に貢献。この日は「最初はスライダーの見分けがつかなかった」と好投手・小木田にてこずりながら、「打席を重ねて目が慣れてきた」と8回にタイムリー。粘り強く戦い、相手のミスを逃さず、好機でたたみかける。打率が低くても頂点に立てた理由だ。阿部監督は「打撃も弱いわけではない。しっかりと振り切れた。得たものを力に変えて、ひとまわり成長して全国にチャレンジしたい」と、甲子園でも「花火打線」と継投を軸にする「アベノミクス」を貫く。【佐々木雄高】

 ◆大曲工 1962年(昭37)創立の県立校。生徒数は415人(女子48人)。野球部は63年創部で部員62人(マネジャー2人)。運動部ではソフトテニス部などが全国出場実績を持つ。主なOBに後松重栄(元メッツ)。学校所在地は秋田県大仙市大曲若葉町3の17。有坂俊吉校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦3-1増田

3回戦3-1秋田

準々決勝5-3大館桂桜

準決勝2-0大館国際情報学院

決勝8-7角館