袋井が14-10で浜松商を破り、創部40年で初の決勝進出を決めた。5連投のエース稲垣淳之介(3年)が7回10失点で今大会初めて降板したが、公式戦初登板の杉山正宗(3年)が2回無失点の好リリーフで逃げ切った。

 9回裏2死走者なし。ウイニングボールは、一塁を守っていたエース稲垣のグラブに納まった。雄たけびを上げながらガッツポーズすると、全校生徒、袋井市民が集った一塁側スタンドが歓喜の渦に包まれた。

 まさにチーム一丸でつかんだ勝利だ。5連投となった稲垣は「疲れていないと思ったのですが、甘いところに入ってしまいました」と言った。1回に3失点。今大会で初めて先制を許したが、チームは慌てていなかった。4回表には、一死満塁から園田蓮(3年)の3点適時打など、打者一巡で7点を奪い逆転。だが、稲垣は苦しみ続けた。雨の影響でボールが滑り、得意のスローカーブが使えなかった。4回裏、すぐに4点差を追いつかれた。

 その後も打撃戦となったが、左翼手の加藤悠太(3年)が好プレーを連発し、3番の井下田謙(3年)は3安打3打点。加藤は「守備で助けてやろうと思いました」と言い、井下田は「今までは淳之介に助けられた。今度は僕たちが打ってやろうと思いました」と胸を張った。

 8回からは公式戦初登板の杉山が輝いた。不動のエース稲垣が初めて降板。球場内がざわついたが、三塁手兼投手の杉山は、制球よく強気に攻めて2回を2安打無失点に抑えた。「緊張はなかったです。応援の声もマウンドに届いて勇気づけられました。『神ってる』と思います」。

 初の決勝進出で相手は常葉学園菊川。今春の西部地区大会決勝で1-11の大敗を喫しているが、鈴木彰洋監督(39)は「春の勝敗は気にせず『いつも通り』やるだけです。勝ちに行きます」と言った。袋井は1976年(昭51)に創部し、86年に春季県大会を制している。だが、悲願は夏の甲子園出場。下馬評なんて気にしない。全力でつかみにいく。【鈴木正章】