広島新庄が08年広陵以来の連覇を果たした。エース堀瑞輝投手(3年)が172球の完投で、2年連続2度目の夏の甲子園に導いた。1点リードの8回、杉村泰嘉内野手(3年)の2点適時二塁打などで3点を追加。9回に1点差に追い上げられたが、堀が如水館の反撃を退けた。自己最速を1キロ更新する147キロを3度マークしたプロ注目左腕が、成長した姿を聖地で披露する。

 捕手から送られた最後のサインは「笑え」だった。3点差から1点差に詰め寄られた9回、なおも1死一、二塁。球数は170球を超え、相手は今春に9回逆転を許した如水館だ。捕手しか見えていなかった堀の視線の先には、右人さし指で口もとを指す古本幸希(3年)がいた。「気持ちが球に乗るタイプだけど、周りが見えなくなることもある」と察した捕手の笑顔に「投げ急いでしまっていたところがあったけど、落ち着けた」と堀。172球目、142キロの直球で併殺に打ち取ると、この日一番の笑顔を見せた。

 2年生エースとして昨夏甲子園出場も、今夏は大黒柱としての重圧があった。大会中は眠れず、登板前の吐き気も珍しくなかった。「自分たちが引っ張って甲子園」の思いは新チーム当初、空回りした。センバツ出場を目指した昨秋中国大会は1回戦で開星(島根)にコールド負け。恩地康平主将(3年)は「自由人が多い。私生活からちゃらんぽらんで雰囲気も悪かった」と振り返る。敗退した数日後、最上級生同士で本音をぶつけ合った。最初は険悪な雰囲気にもなったが、次第にチームとしてまとまり絆は強固となった。

 堀はエースとして武器を磨いた。積雪で練習メニューが限られる冬に、長靴を履いた約10キロのロードワークで下半身を鍛えた。「あまり蹴ることができないし、重たい」と県北の立地をプラスに変えた。授業中には机の下で、こっそりテニスボールを握って握力を鍛えた。

 この日、投球の9割以上が真っすぐ。6回には自己最速の147キロを計測した。迫田守昭監督(70)は「昨夏から5~6キロ速くなった。変化球はまだ精度を上げないといけないけど、ストレートに限れば田口(巨人)よりも上」と成長を認める。3試合連続完投で連覇に導いた。「全力を出せるようにしたい」。その目は真っすぐ、聖地を見つめていた。【前原淳】

 ◆堀瑞輝(ほり・みずき)1998年(平10)5月10日生まれ。小2から昭和クラブ(軟式)で野球を始め、昭和中野球部(軟式)まで投手と外野手。広島新庄で1年夏からベンチ入り。昨夏甲子園初出場時は背番号1。1回戦の霞ケ浦(茨城)戦は完投勝利。2回戦の早実(西東京)戦で4回途中降板し敗戦。昨秋は県大会で広陵を1安打完封し、15三振を奪った。177センチ、72キロ。左投げ左打ち。

 ◆広島新庄 1909年(明42)新庄女学校として創立の私立校。07年現校名。生徒数433人(女子153人)。野球部は28年創部。部員136人。甲子園は春1度、夏2度目。主なOBは広島永川勝浩、巨人田口麗斗ら。山県郡北広島町新庄848。久枝直校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦18―1海田

3回戦10―0呉高専

4回戦6―0廿日市西

準々決勝5―4広島商

準決勝4―1崇徳

決勝5―4如水館