友の「大志」を、しっかりと受け継いだ。第98回全国高校野球選手権(7日開幕、甲子園)に出場する北北海道代表のクラークが27日、甲子園メンバー18人を発表した。前日26日の練習中に、背番号13の大山紘平外野手(3年)が左腕を骨折したため、北大会で記録員としてベンチ入りした山下智也外野手(3年)を急きょ登録。佐々木啓司監督(60)も一目置く分析力で、勝利をたぐり寄せる。

 本番まで1週間あまり。急きょ、甲子園のベンチ入りが決まった山下に、笑顔はなかった。前日26日、北大会で背番号13を付けた大山が、中堅守備から打球を追った際に右翼手と接触。深川市内の病院で検査を受けた結果、左腕橈骨(とうこつ)の骨折と判明した。「代えるなら、山下を入れてください」という大山の願いを、佐々木監督が聞き入れた形だ。

 同学年で同ポジション。ともにデータ分析を任されることが多く、今春の全道大会では、降雨ノーゲームの直後に宿舎で相手チームを分析した。山下は「ずっと一緒にやってきた仲間。(甲子園では)大山のグラブを借りて、思いを背負ってプレーできたら」と、夢目前に無念の涙を流した友を思いやった。

 大阪府八尾市出身で、1度は野球を諦めた。「もう1度、甲子園を目指したくて」と、高1の8月、関西地方の高校から転入。見知らぬ土地での寮生活に不安はあったが「4月に入学していた仲間も先輩も気遣ってくれて、うまくなじませてもらった」。記録員としての経験は豊富で、佐々木監督は「分析力もあるし、良い助言ができるはず」と期待する。

 高校野球観戦が好きで、大阪時代は頻繁に通った甲子園。偶然、観戦した11年夏の白樺学園対智弁和歌山(和歌山)戦が忘れられない。試合は白樺学園が延長10回サヨナラ負けも、強打はしっかり記憶に残った。「まさか、その数年後に、自分が北北海道の代表として甲子園へ行くなんて」。運命に導かれるように、聖地に挑む。【中島宙恵】