東北の左腕エース渡辺法聖投手(3年)が、独特の「招き猫投法」で名門復活に導く。招き猫の手のように左手首を曲げてボールを握り、ほぼテークバックなしで最速139キロの直球を投げ込む。初めての甲子園のマウンドで16球。「ストライクが投げられるかなと思ったけど、しっかり投げられた」と笑顔を見せた。

 変則投法にたどりついたのは今春だった。「もともとスリークオーターだったけど、制球が定まらなかった」。2年時は公式戦登板なし。ストライクを投げるための試行錯誤を繰り返した。「どれだけ試したかわからない。『変な投げ方だな』と思ったけど、しっくり来た」。手応えをつかんだが、仲間から「なんだ? そのフォームは」と、からかわれた。「投げたくない時もあったし、フォームを戻そうと思ったけど無理だった」。独特の投げ方を貫き、今春の県大会からエース番号を獲得。東北大会優勝に導き、甲子園出場の原動力となった。

 直球の最速は約20キロ伸び、味方からも絶大な信頼を勝ち取った。帽子のつばの裏には、「何事も挑戦」と書いた。東北復活への、挑戦が始まる。