日南学園が宮崎勢夏50勝目となる9年ぶり勝利を収めた。160センチの主将エース左腕、森山弦暉(げんき)投手(3年)が「ありんこ軍団」の愛称を持つ八王子学園八王子打線を8回4安打無失点に抑える好投。18個の内野ゴロの山を築いた。

 春よりもたくましくなった森山が、欲しかった甲子園勝利を手にした。相手打線に8回まで三塁を踏ませない好投。徹底して低めにボールを集め、24個のアウトのうち、18個の内野ゴロを奪った。

 「春にサヨナラで負けていたので、夏はまず1勝したかった。勝ててホッとしています」

 センバツは明石商(兵庫)との初戦で9回に犠打処理で悪送球し、その後スクイズを決められてサヨナラ負けを喫した。「あの回の映像だけは悔しくて今も見られない」。犠打処理の練習を徹底し、リベンジの思いを胸に、再び甲子園に戻ってきた。

 出場49校の背番号1の中で最も身長が低い160センチ。親に牛乳を強制的に飲まされてきたが、身長の伸びは中3で止まった。森山は現実を受け止め「身長があったらもっと投球が楽だろうけど、身長を伸ばすよりも(現在129キロの)最速を上げたい」と割り切った。野村克也氏の著書「野村ノート」を読み「安打を打たれても、どれだけ粘り強い投球をするか」と、打たれ強い投手も目指してきた。

 センバツ後、森山は5キロ太って体重70キロをオーバー。仲間から「チビデブ」と言われるようになり、金川豪一郎監督(39)からも、減量指令が発令されたが「体重が増えてボールにキレが出た」と前向きだった。

 春夏通算4度目の甲子園で初勝利を挙げた指揮官が「今日は森山の真骨頂。球威はないが、とにかく低めをついてくれた」。今大会初の完封は逃したが、小さくても、貫禄たっぷりの投げっぷりだった。【福岡吉央】

 ◆森山弦暉(もりやま・げんき)1998年(平10)11月2日、宮崎県生まれ。小1から五十市タイガースで野球を始める。中学は宮崎くしまボーイズ。投手一筋。日南学園で初めて背番号1をつけたのは2年春。趣味は読書。160センチ、65キロだったが、70キロを超えてしまい、67キロを目指して減量中で現在69キロ。左投げ左打ち。

 ◆日南学園の今センバツ 1回戦で明石商(兵庫)と対戦。1-2で迎えた9回表に同点に追いついたが、その裏、1死一塁で森山が相手のバントを処理するも、二塁に悪送球。その後、1死満塁からスクイズを決められ、サヨナラ負けを喫した。