第98回全国高校野球選手権に出場する常葉学園菊川(静岡)が今日12日、第4試合(午後3時30分開始予定)で秀岳館(熊本)と対する。チーム一の秀才で3番を打つ鈴木蓮夢内野手(れん=3年)は、チャンスメーカーに撤して強力打線をけん引する覚悟を示した。チームは今日11日、兵庫・西宮市内で2時間の最終調整。みっちりと打ち込んだ。

 試合を翌日に備え、栗原健外野手(3年)米沢利紀捕手(3年)がフリー打撃で柵越えを連発する中、鈴木は冷静に逆方向へ鋭い打球を打ち続けた。

 鈴木 3番ですが、長打の打てる打者ではありません。自分が決めるというよりチャンスメークを心がけています。

 栗原を筆頭に豪快なフルスイング打線が特徴の常葉学園菊川だが、柔らかくセンターから逆方向へはじき返す鈴木もキーマンの1人だ。静岡大会は25打数10安打の打率4割で打点8。本人は謙遜するが自ら決める勝負強さもある。

 鈴木は家族の思いも胸にプレーする。兄留偉さん(20)は愛知・豊川で投手だった。高3時にチームはセンバツに出場。だが、留偉さんはベンチ外で、聖地の土を踏めなかった。当然、常葉学園菊川にも同じ境遇の3年もいる。聖地でプレーできる立場の鈴木は言った。「甲子園に立てなかった兄の分まで頑張りたい。1つでも多く勝って上に行きたいです」。

 野球を離れても冷静な鈴木は、秀才でもある。学校では特進クラスに所属し、1学期の期末試験も学年3位だった。「大学でも野球は続けたいですが、勉強で入りたい。森下先生からも『野球だけやってもダメ。両方あっての高校生活』と言われています」。文字通りの文武両道だ。

 相手はセンバツ4強の秀岳館だが、ひるむことは全くない。「勝つことだけを考えてやります。勝利に貢献できる打撃がしたい」。クールな鈴木の口調が、少し熱くなった。秘めた闘志は今日、甲子園で全開になる。【鈴木正章】

 ◆鈴木蓮夢(すずき・れん)1998年(平10)6月8日、袋井市生まれ。袋井東小1年から袋井東少年野球クラブで競技開始。袋井中では掛川シニアに所属。177センチ、65キロ。右投げ右打ち。血液型A。