3年ぶり5度目出場の常葉学園菊川(静岡)が、秀岳館(熊本)に1-6で完敗した。自慢のフルスイング打線が、相手3投手の継投で5安打に抑え込まれた。山本雄大外野手(3年)の本塁打で一時は同点としたが、終盤に力尽きた。昨年、一昨年の静岡に続いて静岡県代表は、3年連続での初戦敗退となった。

 笑顔だった栗原健外野手(3年)の目に、涙があふれた。9回2死、堀慶一朗内野手(3年)が左飛に倒れてゲームセット。常葉学園菊川の夏が終わった。

 「初球から思いきりいきます。観客が沸くようなフルスイングをします」。試合前の宣言通り、高校通算48本塁打の栗原は、第1打席の初球からフルスイングした。結果は遊ゴロ。その後も変化球を振らされ、甲子園で快音を響かせられなかった。8回は四球で出塁。2死一、二塁から鈴木蓮夢(3年)の投ゴロで全力疾走した際、両ふくらはぎと股関節がつった。

 治療の後、8回裏の守備につくために走ってセンターに向かうと、3万9000人の大観衆から大きな拍手を送られた。「9回もみんなが『クリに回せば勝てるぞ』と自分のために頑張ってくれた。絶対に勝てると信じていたのに…悔しいです」と栗原。必死に涙をこらえながら話した。

 センバツ4強の強豪を相手に意地は見せた。6回には「恐怖の9番」山本が放った左中間への本塁打で同点にした。「生きてきた中で一番感触が良かった。日々フルスイングをしてきたから打てました」。エース左腕落合竜杜(3年)も13安打を浴びながらも粘りの投球を続けた。「あまり悔いはないです。本当に楽しかった。この仲間と森下監督のもとでやれたことがうれしかった」。

 栗原は「甲子園でも笑顔で自分たちらしい野球はできました」と言った。甲子園の土は持ち帰るが、「またプロとして、ここに戻ってきた時に返します」。そう話すと、少し顔をほころばせた。高校野球を甲子園で終えた幸せをかみしめ、栗原は次のステージに向かう。【鈴木正章】