木更津総合(千葉)早川隆久投手(3年)が、1球に泣いたセンバツの借りを完封で返した。唐津商(佐賀)に二塁を踏ませず2安打に抑え、2-0の完封勝ちで3回戦に進出した。

 木更津総合・早川の新たな必殺技「ダブルツーシーム」が、初回から決まった。左打者を連続三振に抑えると、右打者の3番岡本にはこの夏のために習得した新球を次々と投じた。変化の少ないツーシームで追い込み、最後は外角低めに鋭く落として3者連続の空振り三振。「変化球がすごくよかった。成長を実感できた。木更津総合で初めて(甲子園で)完封できてうれしい」と笑みを浮かべた。

 センバツでの1球が、左腕を進化させた。準々決勝の秀岳館(熊本)戦、右打者への外角直球をバットに当てられ続け、サヨナラ打を浴びた。「逃げて落ちる球があれば結果は変わった。ツーシームを投げたい」。広島黒田の本「クオリティピッチング」を、ページが破れかけるまで読んだ。ツーシームを決め球とするDeNA山崎康の動画も見て研究した。「人さし指の使い方で、落差を調節できるようになった」。6月の練習試合で手応えをつかみ、戻ってきた甲子園。制球力抜群の直球と同じ軌道から動くボールで圧倒した。

 最大の武器を封印しても勝った。打者の内角をえぐる直球で抑えてきた早川は「他の球でどれだけ抑えられるか分かった」と自信を深めた。2三振した唐津商・岡本は「内角が頭にあって外に踏み込めなかった。ツーシームはいきなり外に落ちた」と完敗を認めた。

 直球はロッテなどの計測で自己最速の146キロをマークした。四死球2個でも「もっと際どいコースに投げられた。今日は80点くらい」と言った。寮のベッド脇の壁には、サヨナラ負けした秀岳館戦の新聞記事を張ってある。10種類以上あったルーティンもやめた。「験かつぎに頼らない投手になる。完全試合が100点です」。早川が、BIG3にも負けない投球術で頂点を目指す。【鹿野雄太】

 ◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)1998年(平10)7月6日、千葉県生まれ。上堺小1年からソフトボールを始める。横芝中では軟式野球部に所属。木更津総合では1年秋に背番号「10」でベンチ入り。180センチ、73キロ。左投げ左打ち。家族は両親と姉2人。

 ◆千葉県勢の完封&2桁奪三振 74年の金属バット採用後、夏の大会では74年土屋正勝(銚子商=中京商から13個)91年荒井修光(我孫子=米子東から14個)99年清水大輔(柏陵=旭川実から15個)に次いで17年ぶり。