日南学園(宮崎)が市和歌山を倒し、07年以来、夏4度目の16強に進出した。チームで唯一、3度目の甲子園に立つ副主将、3番前田尚輝(よしき)内野手(3年)が、適時失策を取り返す3打点の活躍をみせた。

 誰よりも「見えてる男」が、日南学園を16強へと導いた。2回に1死二、三塁から二塁へのゴロをトンネルし、先制の2点を献上した前田がバットで奮起した。初戦は先発9人で投手森山と2人だけ安打がなかったが、この日は3打点の活躍。守備の汚名を返上する打撃で、2回戦突破を決めた。

 「自分のミスで先制点を取られたので、何とか自分の打撃をしようと思った。貢献できてよかった」

 0-3で迎えた3回1死満塁から左翼への犠飛で1点を返すと、5回には2死一塁から右越え適時二塁打で1点差。6回には1点を勝ち越した後、2死満塁から押し出し四球を選んだ。

 チームきってのいたずら好き。初戦では甲子園に向かうバスの中で硬い顔だった2年生の芳賀に「お前、ベルト忘れてるぞ」と冗談を言って慌てさせ、緊張をほぐした。「チームが盛り上がるためにあえてやっている」という副主将。試合中も常に周囲を見渡す。選球眼も抜群だった。

 同校OBの2人の兄にささげる勝利でもあった。6歳上の長男俊さんは甲子園に出場できず。1歳上の次男智也さんは14年夏に遊撃手として甲子園出場も、初戦敗退。前田も初戦は安打が出ず、俊さんから「空振りしてもいいから、気持ちのいいスイングをしてこい」と、電話で激励されており「兄にいいプレーを見せたかった」と胸を張った。

 次勝てば寺原(現ソフトバンク)を擁した01年以来、2度目の8強進出。宮崎県勢初Vが目標の前田は「目の前の1試合に集中したい」と、かぶとの緒を締め直した。【福岡吉央】