日南学園(宮崎)が北海(南北海道)に敗れ3回戦で姿を消した。粘投を続けていた160センチのエース左腕森山弦暉投手(3年)が8回に3失点で力尽きた。

 涙が止まらなかった。1-1の同点で迎えた8回。日南学園・森山は1死二塁から4番佐藤大に左中間を破る適時二塁打を許すと、続く川村には右翼への2ランを献上。打球が飛び込んだスタンドを見つめたまま、しばらく動けなかった。

 打たれたのはともに低めのツーシーム。「失投ではない。決まったと思ったが相手が上だった。打たれた球に悔いはないです」。2死になり、マウンドに向かった萩原捕手が「最後になるかもしれない。お前のすべてを出してくれ」と声を掛けると自然と涙がこぼれた。9回も目を真っ赤にはらしベンチで号泣し続けた。エースとして、主将として、一切妥協することなく、チームの誰よりも練習し続けてきた3年間の思い出が、次々と頭をよぎった。

 外角を狙われ、4回までに7安打を許したが、その後、内角への強気の攻めに切り替えた。6回には1死満塁のピンチを遊撃への併殺で切り抜け、5度のガッツポーズ。だが、最後に力尽き寺原(現ソフトバンク)が主戦だった01年以来の8強はかなわなかった。

 「甲子園の舞台を楽しめた。ほかの人よりも背が低いので、力で抑えられず、苦労もあったが、自分の力以上のものを出せた。仲間や家族のサポートがあってここまで来られた。感謝の気持ちでいっぱいです」

 体が大きくなくても全国の舞台で戦えることを証明した森山は、今後は大学で野球を続けるつもりだ。「こういう大舞台で勝ち切れる投手になりたい」。甲子園で2勝を挙げた「小さな大エース」は、最後は胸を張って甲子園に別れを告げた。【福岡吉央】