札幌地区で、札幌創成が札幌白石に6-5で競り勝ち、創部53年目で秋は初めての全道切符をつかんだ。かつてプロ野球・中日で外野手として7年間プレーした遠田誠治監督(52)が今年4月、2年間務めたコーチから監督に就任。元プロの手本を見ながら成長したナインが接戦を制した。

 目前に迫った創部以来の悲願を逃がさなかった。札幌創成は9回、札幌白石に1点差まで追い上げられた。なおも1死満塁のピンチ。ベンチから見守った遠田監督は「腹をくくった。僕の方が動じていた」。先発のエース蠣崎(かきざき)修(2年)に全てを託した。鋭い内角直球で見逃し三振を奪って2死。最後は左飛に打ち取った背番号1の姿に「すごく満足」とうれしそうにうなずいた。

 経験豊富な指揮官に、選手がついて行く。遠田監督は北海で82年春の甲子園に出場。新日鉄室蘭を経て中日では星野仙一元監督(69)のもと、俊足外野手としてプロの世界に身を置いた。ナインにとって憧れの舞台に立った経験を生かし「ただ口で言っても伝わらない」と、マシンでの打撃練習中には自ら打席に立ち、実際に手本を見せる。西村光平主将(2年)は「すごい打っていた。柵に当たっていた」と52歳でも衰えぬパワーに感嘆。説得力は増し、信頼を集めている。

 闘将と呼ばれた星野氏譲りの言葉の力で気持ちを乗せる。試合前には「気持ちをぶつけて、向かって行け」とナインを鼓舞。「打撃はまだ」というチームがこの日13安打を放ったように、力を引き出した。大会前に不調だった蠣崎は「『いつも通りのことをやればいい。何も変える必要はない』のひと言で立ち直れた」。時には選手を温かく包み込む。

 プロとは違う、伸びしろたっぷりな高校生の指導。「成長する姿を見るのが楽しい」。今春の監督就任以来、自信を持たせるチームづくりに取り組み、1つ成果を得られた。ナインも意識していた秋は初の地区突破。今夏の地区初戦敗退後、目指した全道舞台へ、西村は「目の前の試合に勝っていきたい」。慕う指揮官とともに挑戦する。【保坂果那】

 ◆札幌創成と道大会 春は09年に3回目、夏は14年に10回目の出場を果たしている。3季通じて春の09年、夏の01年などベスト8が過去最高。