第99回全国高校野球選手権南・北北海道大会の地区予選が、道内10地区のトップを切って室蘭と函館で開幕した。室蘭地区では、開幕試合で苫小牧東が穂別を12-0と5回コールドで下し、道内1勝一番乗りを果たした。部員間で恋愛小説を回し読むという独特の方法でチームワークを強化し、昨夏以来3季ぶりの公式戦勝利を挙げた。

 苫小牧東が高校に隣接する“ご近所”とましんスタジアムで、17年夏の高校野球道内最初の校歌を歌い上げた。10時1分開始、11時9分終了。試合時間1時間8分の早業で、同日開幕函館地区1勝目の函館中部より90分早く試合を締めた。

 主将の雁田皐太三塁手(3年)は「開幕戦で多くの人が見ていたので緊張した。でも点差が開いてからは自分たちのプレーができた」と振り返った。初回に相手投手の乱れから無安打7四死球で5点先制し、2回には先頭の雁田が左越え三塁打で口火を切ると、この回一挙4点と畳みかけた。3回2死一、三塁から7番石川泰地二塁手(3年)の左中間2点適時二塁打などでさらに3点を追加し、突き放した。

 昨秋、今春と地区初戦で敗退しており、これが新チームでは初勝利となった。12点差と大味な試合になったが前川護監督(39)は「序盤にミスもあり満足いく内容ではなかったが、この子たちにとって公式戦で1つ勝てたことは、次に向けた自信になる」と意義の深さを強調した。

 独特の手法で築いたチームワークが、勝利を呼び込んだ。遠征の移動中に恋愛小説を回し読みし、感想を伝え合うことをルーティンにしてきた。「感動した部分が重なると楽しくなる。互いの感性を理解し合えるし、野球でも言い合える関係がつくれた」と雁田。雁田は昨年12月に映画化された七月隆文の「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」を紹介した。硬派な野球部には珍しいソフトでラブリーな作業が絆を強め、未勝利の弱小軍団を、どん底からはい上がらせた。

 今年で創立80周年。11月には周年式典が控える。「みんなでいい夏にして、野球部として最高の報告をしたいですね」と前川監督。恋愛小説で紡いだ結束力を武器に、15年以来2年ぶりの南大会進出を目指す。【永野高輔】