ケビンが打てば勝つ! 叡明(埼玉)がガーナ人の父を持つ三上ケビン外野手(3年)の3安打1盗塁の活躍で初戦に快勝した。第2打席であと約30センチで本塁打となる左翼フェンス直撃の三塁打。その後も二塁打、単打と打ちまくった。6点を奪い、守っては3投手のリレーで1安打完封。ムードメーカーが甲子園初出場を目指すチームを波に乗せた。

 三上のバットから快音が響いた。3回の第2打席。高めスライダーに軽くバットを合わせると高々と上がった打球が左翼へグングン伸びた。両翼99メートル、さらに4・8メートルの高いフェンスがある県営大宮公園球場。そのネット最上部の黄色い部分に打球は当たった。あと30センチ。わずかに届かなかったが50メートル6秒2の俊足で悠々と三塁に到達した。

 これで乗った。5回の第3打席では左翼線を痛烈に破る二塁打を放つとノーサインで三盗成功。捕手の悪送球を誘い一気に生還した。さらに8回の第4打席では中前安打を放った。ネット裏で視察した日本ハム今成スカウトは「変な癖が無いし素直」と評価した。

 三上は「行ったかなと思ったんですが…。次、また県営でやれたら今度は本塁打を打ちたい」と話した。そして自らの打撃を採点し「80点。1打席目が右飛。4本打てていれば100点でした」と笑った。

 チームを盛り上げるムードメーカー。この日は試合前のベンチで「あれ、今日って俺、1番じゃん」と不動の4番打者がうそをついた。スタメンが発表されると「うそじゃねーか」と笑いが起こった。「うそやダジャレを言って笑わせるのが自分の役目」と話す。前日9日夜は寮の仲間10人とラーメン店で決起集会。つけ麺を食べて盛り上がった。

 中村一仁監督(52)は「ケビンが打つとみんなが波に乗れる。ナイスバッティングでした」とたたえた。三上は楽天オコエと比較されることに「よく言われます。オコエさんは甲子園で本塁打を打った。超えられるように頑張りたい」。初の甲子園へチームを軌道に乗せた。【福田豊】

 ◆三上(みかみ)ケビン 1999年(平11)6月4日生まれ、埼玉・草加市出身。当初はサッカーをしていたが小4時に友人に誘われ野球に転向。谷塚中では軟式でプレーし県大会出場。父マービンさん(55)はガーナ人。母淳子さん(54)は会社員。弟1人。185センチ、78キロ。右投げ右打ち。高校通算12本塁打。目標の選手は日本ハム中田、ソフトバンク柳田。将来の夢はプロ野球選手。