常磐(群馬)山上信吾投手(3年)の夏は、不本意な形でスタートした。先発マウンドを仙波涼人投手(3年)に譲り、右翼手でスタメン出場。マウンドに上がったのは、3点リードの8回表だった。2死二、三塁の場面で登板し、三振を奪ってピンチを防いだ。

 そこまでは良かった。しかし、9回に突然制球が乱れた。先頭から11球続けてストライクが入らず、3連続四球。「朝起きたときから緊張していて、マウンドでもソワソワしていました」と、初戦特有の空気に影響を受けた。外野の守備に回っていた仙波に、再びマウンドに立ってもらった。チームは勝利したが、山上の顔色はさえなかった。

 この日はスタンドにプロ5球団10人のスカウトが集まっていた。キャッチボールをするだけで、自然と視線が集まる。「メンタルが強い方ではなくて…。正直、プレッシャーはあります」と語る。緊張もあり、本来の投球ができなかったが「注目される中でも結果を出さないといけない。次はチームの勝利に貢献する投球をします」と前を向いた。

 河津章監督(56)は「山上があんなに崩れるとは…。今日は50点」と接戦を振り返った。そんな同監督は今大会、特別な思いを持って戦っている。

 高校時代を過ごした大分県日田市が、5日からの豪雨で大きな被害を受けている。母校の日田林工は地域の人々の避難場所になった。学校前を流れ、校歌の歌詞にも入っている花月川は氾濫した。「知人には全員と連絡が取れたので大丈夫です」と気丈に振る舞うが、心配は消えない。「甲子園に出て、私の姿を見せて、元気を与えたいですね」。常磐が甲子園に出場するには、エース山上の復調が欠かせない。【太田皐介】