大曲工は7-0の8回コールドで秋田西を退け、夏連覇に向けて好発進した。プロ注目右腕・藤井黎来(れいら=3年)が自己最速タイになる144キロの速球をまじえ、7回を毎回の12奪三振4安打無失点でゲームメーク。打線も1番三浦翼右翼手(3年)の先頭打者本塁打などで援護した。

 ドラフト候補の藤井が期待通りの投球を披露した。夏初戦の緊張もどこ吹く風。立ち上がりの1投目に138キロの直球でストライクを奪い、最後の夏の陣をスタートさせた。初回1死から4者連続を含む毎回の12奪三振。4回裏1死三塁の窮地では相手5番を自己最速タイの144キロで追い込み、143キロで空振り三振に切る。藤井は「初戦なので野手に取らせてリズムをつくるつもりだった。(奪三振は)自分のベストボールを投げた結果」と振り返った。阿部大樹監督(46)は「経験値を生かして落ち着いてゲームをつくってくれた」と評価した。

 「スライダーとフォークのキレも良くなった」(藤井)。この日は持ち球すべてで三振を奪った。これまで、球速よりも球のキレと制球にこだわり、すべての球種の質を伸ばす練習を続けた。人さし指と中指だけで2~3キロのオモリを引っ張るトレーニングも実践。「指先で押し出す力も強くなった」と実感している。

 ネット裏ではパ・リーグ4球団、セ・リーグ3球団のスカウトも視察。ソフトバンク作山スカウトは「インコースも突けるし、センスがいい。順調に成長すれば十分プロでもやれる」と将来性に期待した。春の地区大会初戦の増田戦は6回から救援。4回を8奪三振無失点に抑えたが2-4で敗れ、県大会出場を逃す悔しさも味わった。ノーシードから駆け上がる甲子園ロード。明日15日の2回戦は昨秋の県大会決勝で1-4で敗れた横手と対決する。将棋界では同姓の藤井四段が大活躍。藤井は「リベンジしたい。常にベストボールを投げ、1戦1戦を全力で戦いたい」と決勝まで勝ち上がり、鍛えた指先で甲子園に王手をかける。【佐々木雄高】