9人ぎりぎりで臨む大会。1人でも負傷者が出れば、たちまち没収試合になる可能性もある。「今までも9人ぎりぎりでやってきた時期もある」と市野監督。この日の公式練習では指揮官自らが、グラウンド整備を行った。欠けたピースをみんなで埋めてきたのが枝幸野球だ。川合の代役で左翼で出場する堀川拓朗(1年)は「川合先輩に『あとは任せたぞ』といわれた。先輩の分までチームに貢献したい」と闘志を燃やした。

 網走南ケ丘戦の前日16日には、川合がチームに合流する。試合では一塁か三塁コーチとして起用することを検討している。エース堀川拓朗(3年)は「今はケガをしないこと、自分のプレーに集中することだけを考えている」。ナインの思いは「勝って川合と笑いたい」。逆境から団結した枝幸丸が、夏の舞台で戦い抜く。【浅水友輝】

 ◆枝幸(えさし)町 人口は8437人(15年国勢調査)。宗谷地方南部に位置し、面積の8割以上が森林。06年に旧枝幸町と歌登町が合併して誕生した。毛ガニ漁獲量は日本一、ほかにも酪農や林業が盛ん。ご当地キャラクター「えさっしー」は自然豊かな町が表現されている。ふるさと納税の返礼品は毛ガニ、メジカサケ、ホタテなど海産物が主体。枝幸高は1951年に創立され全校生徒は169人。

 ◆没収試合 野球はサッカーと違い、1人少ない状態で試合を行うことはありえない。野球規則7・03(b)で、9人を位置させることができなければフォーフィッテッドゲーム(没収試合)で相手の勝ちになると規定している。ちなみに、地方大会で部員数が少ない出場校が熱中症やケガなどのために没収試合となることはあるが、甲子園では1度もない。