秋田は第1シードの明桜が、エースで4番の山口航輝(2年)の活躍で勝利。8年ぶり9度目(秋田経法大付時代を含む)の夏の甲子園出場に向け好スタートを切った。

 「この夏に150キロを出したい」。最速145キロの山口が「二刀流」でチームを勝利に導き「大台突破」を宣言した。救援直後の7回裏は味方失策で出塁した走者を三塁に背負い、2死から左前打で生還を許した。だが自らに失点は付かず、2回2/3を2安打無失点。すべてのアウトを三振で奪って逃げ切った。4番打者としても2安打1打点2得点。2回には先制ホームも踏んだ。最終9回、この日最速の144キロで三振を奪った山口は「最初は肩が軽かったので半分くらいの力で投げた。ストレートで押すことだけを考えて投げた結果」と振り返った。

 昨秋は、地区予選敗退の悔しさを味わったが、輿石重弘監督(54)が就任した今春以降は県公式戦無敗の10連勝を継続中。「1戦決勝」を信条とする輿石監督に、夏初勝利をもたらした。帝京三(山梨)の監督時に成し得ていない甲子園が、悲願の目標だ。

 だがチーム内に重圧や気負いはない。選手たちとの対話を大切にし、山口の登板時も「適当にいけ。遊んでこい」と伝令に託して緊張を和らげた。山口も「ああいう場面で投げることが多いのは分かっていますから」と先発唯一の2年生とは思えないマウンド度胸で期待に応えた。

 輿石監督同様、今春着任した長瀬達哉部長(25)もフィジカルトレーナーとしての役割を発揮。仙台大やカナダ・トロント大留学で学んだ栄養学や「パワー転換トレーニング」を実践して選手個々の能力を高めている。山口も「あまり力を入れなくても球のスピードもキレも増した」と感じている。岩城圭悟捕手(3年)とはあうんの呼吸。「球は走っているのでコントロールするだけ」と、ミットめがけて右腕を振り抜く。【佐々木雄高】